今年度は、まず昨年度行った安息香酸を減肉壁として知余する加速減肉実験により最適化した実験パラメータを用いてオリフィス下流における円管流路壁上の減肉分布を計測した。得られた減肉分布から、減肉量大・中・小の位置を選定し、これらの位置での壁近傍の乱流流れについてPIVによる流れの可視化実験を行い、速度変動の周波数特性や、乱流エネルギーなどの乱流量について詳細に解析を行った。管壁表面で生じる減肉現象には、管壁ごく近傍(=粘性底層内、本実験条件では壁から0.1㎜程度)の流れが大きく影響すると考えられるが、得られた流れ場は壁から0.25㎜以遠でないと誤差が非常に大きくなったため、粘性底層外における評価を行った。周波数特性については、壁からの距離を0.3㎜-3㎜と変えても分布に大きな変化は見られず、減肉の多寡による変化も見られなかった。このことから、減肉速度の大小と速度変動の周波数特性の間には相関があるとは言えず、他の量が減肉に影響していることが考えられた。そこで乱流エネルギーなどの諸量を詳細に解析したところ、時間平均剪断応力の大きさが、非常に良く減肉速度と相関していることが分かった。しかも壁からある程度(1㎜以上)距離が離れた位置における剪断応力の0.25乗に比例するという結果を得た。次に、オリフィス下流管壁近傍の濃度分布がどのようになっているのかを評価するために、蛍光物質であるローダミンBを安息香酸に混入させた減肉壁を用いた濃度場可視化実験を矩形流路において行った。本実験条件では濃度境界層は0.1㎜オーダーの粘性底層厚さよりも薄くなるが、実験から壁面近傍の高濃度流体の間欠的な巻き上がり(高さ数㎜程度)があることが分かり、減肉速度が大きい部位では高頻度な巻き上がりが観察された。このことから、粘性底層や濃度境界層よりも大きな渦構造が、壁面からの濃度場輸送に寄与している可能性が示唆された。
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