本研究は、原子力機器の安全性評価のために用いられる PFM(確率論的破壊力学)に適した解析基盤システムの構築を目的としている。シミュレーション・ソフトウェアにおいてその信頼性向上・品質保証のため、検証と妥当性確認(Verification & Validation)の重要性が指摘されているが、原子力分野の過酷事象では実験による妥当性確認ができず、ラウンドロビン解析などで複数のソフトウェアの解析結果を比較することが広く行われている。ここで得られた差異が妥当なものであるかどうかを判断することはきわめて難しく、PFM解析に必要となる機能をプログラムの専門家ではない技術者が容易に追加・保守ができる基盤システムの開発が必要である。 3年間の研究期間において、(1) Option パターン、あるいは他のデザインパターンの適用性、(2) 既存ラウンドロビン問題の解析による本システムの拡張性、(3) ハードウェアへの適用性についての研究を実施した。(1)については、申請者が有限要素法基盤ソフトウェアのために開発したOptionデザインパターンをPFM解析システムに適用し、基本的機能の実現を行い、簡単な例題を通して適用可能であることを示した。(2)については、既存ラウンドロビン問題として、日本溶接協会原子力研究委員会が提案した問題を取り上げ、実用的解析が可能であること、他の研究グループの解析結果との比較から、妥当な結果が得られることを確認した。(3)については、GPGPUのヘテロ環境を構築し、簡単なPFM解析を通して、並列解析環境へも適用可能であること、並列処理による高速化がはかれることを確認した。これらの研究成果は、国際会議3件、国内学会2件で発表した。 今後、日米の主要ソフトの機能を取り入れながら、さらに実用的問題に取り組む予定である。
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