研究実績の概要 |
本研究課題は原子核の励起状態のスピン・パリティならびにγ線の多重極度を決めるために,γ線の直線偏光度測定を行うための高感度な測定系を開発し,それをウランの核分裂反応で生成される質量数150近傍の中性子過剰核に適用し,信頼性の高い核データを得ることを目指している.本年度は(1)スピン等が既知の標準線源(Co-60, Cs-137, Eu-152)を用いて最適な測定幾何条件を決めるための基礎実験を行い,(2)その後,京都大学原子炉実験所のオンライン同位体分離装置KUR-ISOLで生成・分離した中性子過剰短寿命核測定への適用を試みた. (1)については,既存設備であるクローバー型ゲルマニウム検出器を直線偏光度測定の主検出器とした上で,偏光の基準面を決めるための補助測定器(以下,測定器1)ならびに検出感度を補正するための測定器(同,測定器2)として3種類の異なるゲルマニウム検出器を様々な幾何学配置に置き,それぞれの条件で直線偏光度測定の感度を実験的に求めた.その結果,実際に偏光が測定できることを確認し,さらに,測定器1に相対効率60%の,測定器2に相対効率38%の検出器を使い,それらを線源との距離が10cmになる位置に置いたときに最も高い性能を示すことを明らかにした. これを踏まえて,測定系をKUR-ISOLに持ち込み,Cs-140(半減期63秒)およびLa-146(半減期6秒)の測定に適用した.しかしながら,KUR-ISOL側の装置の不具合が起きたため,短時間の実験しか行うことができず,十分な統計計数を得るには至らなかった.次年度も引き続き実験を行い,短寿命核へ適用できることを実証し,実験データが得られていないBa-145, La-147などのスピン,パリティ決定を目指す.
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