研究課題/領域番号 |
16K06962
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴井 伸郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員(定常) (20391287)
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研究分担者 |
渡部 浩司 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (40280820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / 非破壊計測 / ポジトロンイメージング |
研究実績の概要 |
2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故以来、動植物体や人体における放射性セシウムの動態に対する関心が高まっている。生体内における放射性セシウムの動態解析の研究において、生きた動植物体内におけるセシウムの動態を可視化する技術は非常に強力なツールである。本研究では、セシウムのポジトロン放出核種であるCs-127(半減期:6.25時間)の製造・精製方法を確立し、ポジトロンイメージング装置を用いることで植物および動物における放射性セシウムを可視化し、その動態を明らかにすることを目的とした。 ヘリウムイオンビームをヨウ化ナトリウムターゲットに照射することで、核反応I-127(α, 4n)Cs-127によりCs-127が生成されるが、副生成物のCs-129由来の412 keV(62%)のガンマ線がポジトロンイメージング(511keVの同時計測)のノイズとなっているため、Cs-129を可能な限り含まないCs-127の照射条件を検討したところ、ターゲットの位置でのビームの最適なエネルギーが55 MeVであることを確認した。 また、陰イオン交換カラムを用いてターゲット由来のヨウ素イオンを除去し、セシウム捕集材を充填したカラムを用いてターゲット由来のナトリウムイオンを除去した後、5 mMの硫酸アンモニウム溶液10mLをセシウム捕集カラムに通液することでCs-127を溶出していた。この最終トレーサ溶液に含まれる硫酸アンモニウム濃度を可能な限り低くするための条件検討を行った結果、セシウム捕集材のグラフト率を500%から100%に下げ、硫酸アンモニウム濃度の流速を3.5 mL/minから0.3 mL/minに変更することで、1 mMの硫酸アンモニウム溶液1mLでCs-127を回収することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cs-127トレーサの製造・生成方法の確立に成功しているため、本課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
開発したCs-127トレーサを利用して、様々な植物(イネ、ダイズ、樹木等)における様々な条件(カリウム濃度、茎の局所冷却等)でのセシウム動態を解析し、植物におけるセシウムの輸送メカニズムに関する基礎的な知見を得る。 また、小動物用PET装置を有する東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターへCs-127トレーサを運搬し、マウスに経口摂取させた際のCs-127の3次元動態の可視化を実現させ、より詳細なセシウムの移行モデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
トレーサ精製の消耗品等を購入する予定である。
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