研究課題/領域番号 |
16K06963
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
石川 法人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (90354828)
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研究分担者 |
田口 富嗣 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (50354832)
篠嶋 妥 茨城大学, 工学部, 教授 (80187137)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高速重イオン / 照射損傷 / 加速器 / 透過型電子顕微鏡 / 自己修復 |
研究実績の概要 |
蛍石型結晶構造をもつセラミックスが耐照射性が高い傾向にあることに着目し、高い耐照射性に何が寄与しているかを検証するために、蛍石型構造のセラミックスを中心とした関連セラミックス材料等の重粒子照射影響を透過型電子顕微鏡及び分子動力学計算を利用して調べた。 照射損傷に伴うナノメートル程度の大きさのナノ構造体(ナノヒロック)の内部を、電子顕微鏡で微細観察した結果、ナノヒロックの内部の結晶構造が壊れて損傷したままのセラミックス(Y3Fe5O12, ZrSiO4など)と、ナノヒロック内部の結晶構造が再結晶化して原子の並びが修復しているセラミックス(CeO2,CaF2など)に分類できることが判明した。後者のセラミックスは、一旦損傷してもすぐに原子の配列を直す能力、つまり自己修復能力を持っていることが示唆された。既存のナノヒロック形成メカニズムのモデルは、前者のセラミックスの損傷形態の観察結果を良く説明できる。一方、後者のセラミックスの観察結果については説明できないことが分かった。しかし、従来モデルで想定されていなかった損傷後の再結晶化プロセスを想定すれば、既存のメカニズムモデルでも説明可能であることが分かった。 ナノヒロックの形成メカニズムの解明のために、CaF2の材料を想定した分子動力学計算によって、照射表面組織(ナノヒロック)と照射内部組織(イオントラック)の形成の様子(表面隆起・表面組織の再結晶・内部損傷)を、再現することが出来た。今後は、その形成プロセスが、透過型電子顕微鏡の観察結果を定量性も含めて再現できるかどうかを検証し、メカニズムの解明を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の損傷予測メカニズムの妥当性を検証するに足るデータが取得できており、かつ分子動力学法計算による実験結果の再現度の程度も上がってきているので、概ね順調に進展している。また、学術誌(Nanotechnology)に成果が掲載された。その成果内容が原子力機構からプレス発表された。その内容は、日刊工業新聞などの3紙の新聞において掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
既存の損傷予測メカニズムに必要な修正点を提案することができたので、今後は定量的にどのような修正をすべきかを検討する。そのために、照射損傷に伴うナノ構造体(ナノヒロック)の観察を進め、より定量的な解析を進めることが必要である。試料の種類の幅を広げる事、さらにデータの統計性を上げることが課題の解決になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度は照射試料の観察結果の再現性及び統計性を確実にすることを優先したため、照射に用いる試料購入の種類を当初計画に比べて限定した。そのため次年度使用額が生じることとなった。 (使用計画)平成30年度予定している照射損傷を伴うナノ構造体の観察に用いる試料購入に使用する計画である。
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