本研究課題では、第一原理計算手法を用いて核燃料の主要成分である二酸化アクチニドの熱物性値の評価を行った。本年度の成果は以下の2つである。 1.二酸化ウランにおけるスモールポーラロンを第一原理計算で再現することに成功した。スモールポーラロンは格子の歪みを伴った局在電子またはホールであり、二酸化ウランの高温での熱伝導率に大きな影響を与えることが予想されている。しかしながら、第一原理計算でその影響を定量的に評価した例は今までにない。それは、第一原理計算で二酸化ウラン中のスモールポーラロン状態を再現することが困難であったためである。そこで、本研究ではまず第一原理計算によるスモールポーラロン状態を再現することを目標とし、電荷分布や原子配置の初期配置を調整することによってその再現に成功した。本成果は二酸化ウランの熱伝導率の精密評価へ向けた重要な一歩であり、今後、熱伝導率評価に応用していく予定である。この成果は原子力学会(2019年春の年会)で発表した。 2.二酸化トリウムと二酸化プルトニウムに対して、格子振動による熱伝導率評価を、第一原理計算を基により詳細な評価を行ない、論文として発表した。第一原理計算による熱伝導率評価は、2016年度より継続して行ってきたが、計算におけるパラメータの妥当性確認や、実際の燃料物質では重要となる粒界散乱の影響調査など、より詳細な評価を行ない、その信頼性を確認した。本研究で開発した手法は実験結果を非常によく再現するものであり、格子熱伝導率の精密予測技術を確立できたと言える。本成果はJounal of Nuclear Materials に論文として掲載された。
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