研究課題/領域番号 |
16K06965
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
本田 充紀 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究副主幹 (10435597)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射光その場観察 / セシウム / 粘土鉱物 / X線吸収分光法 |
研究実績の概要 |
1F事故によって放出された放射性セシウム(Cs)は、汚染土壌中の粘土鉱物に多く収着していると見られるが、特に風化黒雲母が非常に重要であることが明らかになっている。本研究では、粘土鉱物からCsが取り除かれるメカニズム解明や効果的な除去法の開発を進めることでこれらの問題解決を目指している。本研究では、高輝度放射光を用いたその場観察により、土壌からCsが取り除かれるメカニズムを調べた。 実験は福島の風化黒雲母(以下、WB)をモデル土壌として用いた。このWBは阿武隈山地の花崗岩に由来していて福島では広く存在する粘土鉱物である。他の粘土鉱物に比べてCsを強く収着する性質がある。そのためCsを効果的に取り除く反応促進剤として混合塩(NaCl-CaCl2)を加えて実験を行った。混合塩がWBに及ぼす影響を調べるため、200-700℃の加熱温度でその場X線吸収分光測定を行い、混合塩添加の有無によるスペクトルの違いを比較検討した。混合塩を添加しない場合、加熱前後で違いが生じなかったのに対し、添加した場合は、加熱中から室温に戻る過程において違いが生じることが分かった。 この結果は塩添加した場合の加熱処理によりCs周りの構造が変化することを示している。そこで詳しい構造を更に調べるためにフーリエ変換から得られる動径構造関数の結果を比較検討した。その結果、最初は酸素原子と結合しているCs(Cs-O結合)は、加熱過程で部分的に塩素と結合して(Cs-Cl結合)が新しく形成され、冷却によって粘土鉱物中のCsが塩化物相に取り込まれることが分かった。 Csが塩化物相に取り込まれているのであれば、加熱後の試料を水洗することにでCsが効果的に除去できると予想できる。そこで加熱後の試料を複数回水洗後に、蛍光X線分析による定量解析を行った。その結果混合塩添加を施して700℃加熱するとCsは100 %除去されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高輝度放射光を用いたその場観察により、土壌からCsが取り除かれるメカニズムを調べるため研究開発を推進している。その中で、本研究においてはすでにそのメカニズムの解明に成功した。さらに効果的なCs除去法について検討しており、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、土壌からCsが除去する際のメカニズム解明を目的として研究を推進してきた。本研究においてそのメカニズム解明に成功したことから、土壌からCsを除去した後の再生利用へ向けた検討を開始している。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:研究が計画以上に進展したことに伴い研究計画の見直しを行い、H29年度の物品購入計画を再考した結果、当初計画に比べて物品購入のための支出を抑えることができたことにより次年度使用額が生じることとなった。 使用計画:H30年度に予定しているより効果的なCs除去法や土壌からCsを除去した後の再生利用の検討と実験に係る物品購入費用として使用する計画である。
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