福島環境回復へ向けた研究開発として、汚染土壌の減容および再生利用法の検討を推進している。粘土鉱物からCsが除去するメカニズムの解明や効果的な除去法の開発を進めることで、これらの問題解決を目指した。これまでの熱処理法では1000℃以上の加熱が必要であったが、反応促進剤の添加により、低い溶融反応温度の実現を目指し、放射光を用いたその場観察により土壌からCsが除去される機構を調べた。 福島の風化黒雲母(以下、WB)をモデル土壌として用いCsを効果的に取り除く反応促進剤として混合塩(NaCl-CaCl2)を加えて実験を行った。200-700℃の加熱温度でその場X線吸収分光測定を行い、混合塩添加の有無によるスペクトルの違いを比較検討した結果、塩添加した場合の加熱処理によりCs周りの構造が変化した。動径構造関数の結果を比較検討した。その結果、最初は酸素原子と結合しているCsは加熱過程で部分的に塩素と結合して、冷却によって粘土鉱物中のCsが塩化物相に取り込まれることが分かった。この結果から加熱後の試料を水洗することによってCsが効果的に除去されるのではないかと予想され、加熱後の試料を複数回水洗いした後に蛍光X線分析による定量解析を行った結果、混合塩添加を施して700℃加熱するとCsは100 %除去されることが分かった。 Cs除去過程は明らかになったが、Cs除去後の粘土鉱物の構造や、Cs除去過程の反応機構は放射光その場観察では難しい。それは粘土鉱物を構成する元素がSiやAlといった軽元素であり、溶融反応過程でこれら元素のX線吸収分光スペクトルを取得するのが難しいからである。そこでその場測定可能な赤外吸収分光法を導入し、真空加熱拡散装置を用いて反応過程を追随できるシステムの開発を行い、粘土鉱物と溶融塩との相互作用について検討可能なシステムの開発に成功した。
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