研究実績の概要 |
本研究事業最終年度である平成30年度は、初年度及び2年目の検出器特性試験、計算シミュレーション及び測定試験を通した線量率評価及び空気中放射性物質濃度定量の高精度化を目標とし、(a) プルームの経時変化(移動、拡散及び地表面への沈着)、及び(b) 天然放射性核種からのイベントの事前推定(40K,208Tl,228Ac,214Bi及び214Pb)に着目して研究を遂行するとともに、三か年の研究成果を総括した。 (1)平成29年度に開発し、妥当な線量評価が可能であることを検証した1インチ円筒形CeBr3検出器を、ドイツ連邦物理工学研究所(PTB)放射線防護線量計測グループにおいて平坦な広場に放射性プルームを模擬する密封微量線源を自動照射する装置(plume simulator)による放射線場で、核種の変化及び線量率径時変化に係る試験を実施した。試験の結果、137Cs、 60Co及び226Raについて、いずれも基準値に対し4%以内で一致した。 (2)天然放射性核種からのγ線によるイベントの推定とそれらの波高分布からの除去について検討を進め、天然放射性核種からのγ線に対する検出器応答を計算シミュレーションにより推定し、CeBr3検出器のバックグラウンドスペクトルを再現した。計算シミュレーションにより得られたバックグラウンド波高分布は、PTB環境放射線標準放射線場における測定結果と比較し、非常によく一致していることを確認した。 (3)133Ba規制対象外点線源を用いて放射性プルームを模擬した、放射性プルーム中放射能濃度を定量した。測定された波高分布よりγ線フルエンス率を評価し、計算シミュレーションで得られた換算係数を乗じることで、空気中放射能濃度を導出し、同時に、イベントによる線量率の上昇についても精度よく評価できていることを確認した。
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