研究課題/領域番号 |
16K06969
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
籏町 剛 新潟大学, 工学部, 技術専門職員 (40456356)
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研究分担者 |
郷右近 展之 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (20361793)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高温太陽熱 / 蓄熱潜熱 / 水素 / 合金 / PCM |
研究実績の概要 |
本研究では、金属系の相変化材料を蓄熱体として組み入れた変動熱源利用型の新規ソーラー天然ガス改質反応システムの開発を最終目的としている。 天然ガス改質がほぼ100%となる平衡温度750℃以上に大きな潜熱を有するAl-Si合金系について、実験的・理論的検討を行った。また、Cu-Ge合金系についても、実験的な検討を行った。比較対象として、硝酸系溶融塩(NaNO3)について、潜熱蓄熱体として実験的・理論的検討を行った。 Al-Si系については、共晶組成と過共晶組成の4種類の合金を作製した。熱物性が比較的報告されているAl-12wt%Si合金をSiCセラミックカプセルに充填し、本研究室においてSiC/Al-Si潜熱蓄熱複合体を調製した。SiC/Al-Si複合体を高温空気流通下での蓄熱・加熱試験により、カプセル内のAl-Si合金が非平衡融解することを実験的に明らかにした。実験結果に基づき、数値計算による熱伝達解析を実施し、融解プロセス数値解析モデルを作製した。また、比較対象としてSiC/NaNO3潜熱蓄熱複合体についても同様な解析を行い、融解プロセス数値解析モデルを作成した。その結果、SiC/Al-Si潜熱蓄熱複合体が優れた熱応答性・潜熱蓄熱性能を有していることを理論的および実験的に明らかにした。 Cu-Ge合金系については、比熱測定による顕熱蓄熱性能を評価し、共晶組成および過共晶Siの融解による潜熱蓄熱性能を調査した。さらに、太陽熱の熱供給変動条件下における蓄熱・放熱応答性の検討を目的として、電気炉加熱/放冷による蓄熱・放熱サイクル性能を実験的にラボスケールで検討した。これらの実験的検討により、蓄熱放熱サイクルにおける蓄熱体の雰囲気により蓄熱・放熱応答性が変化した。特に空気雰囲気においては、表面に形成した酸化膜が蓄熱体内部の酸化を抑制し、酸化物カプセル型潜熱蓄熱複合体として潜熱蓄熱体として機能することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Al-Si合金、Cu-Si合金やCu-Ge合金をPCMモデル系として選定し、酸化物もしくは高熱伝導性セラミックカプセルによる潜熱蓄熱複合体の作製、ガス流通下での融解プロセスの数値モデル化・複合体の実験的な性能評価を行った。高温空気を供給する熱供給システムを用いて、潜熱蓄熱複合体の融解プロセスを理論的・実験的に明らかにした。熱応答性や潜熱蓄熱容量の観点から、硝酸系溶融塩より優れていることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
空気熱媒による潜熱蓄熱システムを開発すると共に、開発した潜熱蓄熱複合体の熱膨張・収縮による体積変化を制御する技術開発に取り組む。~1000℃の高温空気を蓄熱システムに供給し、ガス流量を変化させながら、蓄熱体の蓄熱・放熱性能を調査することで、システム化した際の課題・修正点を探索する。また、計算機シミュレーションによる蓄熱システムのモデル化を進め、蓄熱システムの高性能化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ソーラー改質システムの熱源である変動熱を吸収・安定利用する潜熱蓄熱システムの設計・理論的検討・実験的検証が研究開始当初の想定よりも進捗したため、次年度使用額が生じた。翌年度は、これを有効利用すべく、蓄熱体の性能向上に向けた計算機シミュレーション、システム化した際の蓄熱体の実験的検討を行う。
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