研究課題/領域番号 |
16K06970
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
西村 顕 三重大学, 工学研究科, 准教授 (60345999)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光触媒 / CO2還元 / 反応促進 / 物質移動促進 |
研究実績の概要 |
CO2/H2O混合系においてTiO2光触媒を用いてCO2を改質・資源化する既往研究では、照射光エネルギーの低利用率や物質移動を十分に考慮しない反応器設計のため、生成燃料の濃度は0.001~0.1vol%程度に留まり、これは燃料利用の目標濃度の1/10~1/100である。そこで本研究では以下の研究目的を掲げ、ブレークスルーを図る。①紫外光域から可視光域まで幅広く光吸収する入射エネルギー高活用型光触媒を作製し、同時にCO2/H2O混合系にH2もしくはNH3を加えることでCO2を燃料に改質する際に必要な電子とH+の供給量を増加させてCO2改質性能向上を図る。②物質移動を促進するため、光触媒反応に使用されず、かつ太陽光中に多く含まれる赤外光を駆動源とする光応答撹拌器を組み込んだ光触媒反応器を開発し、生成燃料濃度:数vol%達成を目指す。 今年度は、入射光エネルギーの吸収特性を向上させることで生成燃料濃度の増加を図ることとし、紫外光以外の波長域の光エネルギーの有効利用、すなわち可視光応答TiO2光触媒の作製を行った。具体的にはパルスアークプラズマガン法でFeをTiO2に担持させて可視光応答光触媒を作製した。そしてSEM、EPMA、TEM、EDXを用いて表面特性を明らかにした。また、このFeから自由電子が放出されるため、この自由電子を還元反応促進に利用すべく、ハイブリッド光触媒内の電子輸送を促進する構造を提案した。具体的にはH2もしくはNH3をH2Oと同時にH+ソースとして用い、その組み合わせを最適化してCO2改質・燃料生成を促進させることを目指した。その結果、H2O/H2/CO2系で最高性能が得られ、また最適モル比はH2O+H2:CO2=1.5:1であった。 さらに、光触媒周辺の物質移動促進を図るため、プロペラ形状の金属翼を作成し、厚さと材質を変更させて翼の裏表の温度を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記した研究目的の「①紫外光域から可視光域まで幅広く光吸収する入射エネルギー高活用型光触媒を作製し、同時にCO2/H2O混合系にH2もしくはNH3を加えることでCO2を燃料に改質する際に必要な電子とH+の供給量を増加させてCO2改質性能向上を図る。」について、H2O/H2/CO2系で最高性能が得られること、また最適モル比はH2O+H2:CO2=1.5:1であることを明らかにし、目的を達成したから。 研究目的の「②物質移動を促進するため、光触媒反応に使用されず、かつ太陽光中に多く含まれる赤外光を駆動源とする光応答撹拌器を組み込んだ光触媒反応器を開発し、生成燃料濃度:数vol%達成を目指す。」については、光応答撹拌器のプロトタイプの設計と性能評価試験は行ったが、回転を実現する様な攪拌翼の作成には至らず、目的は未達である。 従って、総合的に見ると、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度にFe/TiO2可視光応答光触媒は作製したが、複数の金属を担持した光触媒を組み合わせたハイブリッド光触媒の作製までには至っていないので、例えばCuやPdをTiO2に担持した光触媒を作製し、既に作製済みのFe/TiO2と組み合わせてハイブリッド光触媒を作製する。そして、その表面性状やCO2還元性能を評価する。 加えて、光応答撹拌器の完成を目指し、新たに回転翼の材質、寸法、形状を変化させて、翼の裏表の温度を測定すると共に回転条件を明らかにする。その上で、光触媒反応器に光応答撹拌器を組み込み、光応答撹拌器設置によるCO2還元性能向上効果を検証する。
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