マグネシウムにパラジウムを加え,紫外光を照射することにより,水素化マグネシウムからの水素放出が200℃付近から起こるようになり,水素放出温度を100℃程度低下させることができた.パラジウムが光触媒として作用していると考え,3d遷移金属を共存させることによる触媒機能増強を試みたが,逆に水素の安定化が起こる結果となり,なかでもPd-Ti系が最大の水素親和性を示した. 水素吸蔵の中心となるマグネシウム合金を変更することによる光刺激水素放出の低温化は,ニッケル合金以外では認められなかった.マグネシウム単体よりも五酸化ニオブを添加した混合系がより低温で光刺激水素放出することから,パラジウムと五酸化ニオブの共存による効果増強を目論んだが,かえって光刺激水素放出が起こらない結果となった. 水素放出が低温化すれば応用範囲が広がると考えられるカルシウム合金で類似の研究を行ったところ,加熱だけを用いた先行研究では380℃での真空排気でも水素が放出されないとされていたCaLi2において,ニッケル触媒の共存下,黒色のCaLi2で水素の吸放出をさせると,380℃以下でも可逆的に水素の出し入れが起こることがわかった. 水素吸蔵合金の格子内から表面付近にまで移動し,再結合して水素に戻る前の水素原子を有効に使用するプロセスの探索においては,ジルコニウム,バナジウムおよび鉄を主成分とする合金がアンモニア合成に有効であることを見いだした.水素吸蔵後に窒素に曝しても,あるいは窒素吸蔵後に水素に曝しても,アンモニアが生成する. 光照射で水素を放出するプロセスは,おそらく多種類・多段の競争反応となっており,水素原子が捕獲されるポテンシャルの窪みが多様であるらしい.成分の混合をボールミリングでやるか,ミキサーミリングでやるか,些細な差異が結果を左右している.
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