研究課題/領域番号 |
16K06978
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
波岡 知昭 中部大学, 工学部, 准教授 (90376955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 導電率 / オーム損失 / 活性化損失 / シンタリング / 気孔率 |
研究実績の概要 |
大きく2つの方針で研究活動を進めた。一つ目は本研究を提案したきっかけとなったNi/CeO2ナノコンポジット電極触媒を用いた場合の発電性能向上のメカニズム解明、もう一つが、ユビキタス元素としてFeに着目し、Fe/CeO2ナノコンポジット電極触媒の発電性能評価である。 前者に関しては、粒子径分布、結晶子径、電極の気孔率、シンタリングの有無の観察、導電率の測定を行い、そのメカニズムを考察した。セリア含有量の最適値はニッケル:セリア比が30 mol.%の時であったが、30%以上のときにはセリア混合による電極の導電率低下が発電性能低下の要因であった。30%未満、特に10%未満の場合に見られる発電性能の低下はシンタリングの発生と過大な気孔率によるものであった。以上の成果より、ナノコンポジット電極触媒を設計する際の指針を得ることができた。 後者に関しては、鉄:セリア比が30 mol.%付近の発電効率が高い結果が得られた。この結果は上記のNi/CeO2の場合と同様であった。ただ、Ni/CeO2触媒を用いた時と比べ、やや発電性能が低いことがわかった。Ni/CeO2触媒を用いた時と同様の結晶子径、電極の気孔率の測定を行っている。なお、導電率の測定は継続中である。これらの測定結果を基に発電性能の定量的な機構解明を実施したいと考えている。 Fe/CeO2触媒の場合、セリア含有量の違いにより気孔率にあまり差がでないことから、Ni/CeO2の解析で明らかにしたメカニズム以外にも性能に影響を及ぼす要因がある可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、概ね順調に進行しているが、導電率測定のみが遅れている。導電率測定は平成29年度の6月までにFe-CeO2系に関しては終える予定である。 論文執筆も順調に推移している。2016年度に1報掲載され、2報目の論文は2017年4月中に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も2つの方針で研究活動を進めてゆく。1点目はセリア添加によるシンタリング抑制の定量的な評価、2点目は新しい組み合わせによる発電性能の評価である。前者に関し、昨年度は電子顕微鏡による目視の評価であったが、定量的な評価を行うためにTPR分析装置を自作することを計画している。鉄系電極の場合にはセリア添加がシンタリング抑制や酸化鉄の還元促進に影響していることが考えられるため、こちらの評価によりメカニズムが定量的に解明できるのではないかと考えている。 後者に関しては、機能性酸化物側の代替物質に関する検討を考えている。具体的にはO1s軌道の束縛エネルギーの大きさの観点からセリアの代替物質として酸化マンガンの可能性が考えられる。そちらの発電性能評価を中心に、気孔率や導電率の必要な物性値測定を含め検討を含めて行く予定である。また、寿命に関しても検討を始める。 また、当初の計画にはなかったことであるが、平成28年度の成果より、電極の物理構造制御により発電性能が向上する可能性が示された。つまり、セリア含有量だけでなく、別途気孔率や導電率の制御を行うことで性能が改善される可能性が示された。こちらについても新たに検討を行うことにする。
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