研究課題/領域番号 |
16K06978
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
波岡 知昭 中部大学, 工学部, 准教授 (90376955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セリア / 酸化還元 / 酸素分圧 / 鉄系触媒 / 交換電流密度 / 電荷移動係数 / 固体酸化物形燃料電池 / 燃料極 |
研究実績の概要 |
はじめに工学的観点からFe/CeO2コンポジット触媒を用いた燃料電池の耐久性や炭化水素に対する適用性を検討した。前者に関し、Fe/CeO2モル比7:3のセルを用いて同一条件で3回の長時間発電実験をおこなったところ、いずれの条件においても時間経過とともに過電圧が増加する傾向があることがわかった。ただし、その増加速度は時間経過とともに小さくなっていくこともわかった。 燃料として直接メタンを供給して発電実験を行ったところ、発電そのものは可能であり、過電圧も水素発電の場合と比べ0.05 V程度大きいレベルであったが、実験開始後12分頃から過電圧の増加が観察され、20分過ぎに端子間電圧が0となった。発電前後のインピーダンスを比較したところ、オーム損失抵抗も活性化損失抵抗も共に増大しており、メタン供給により電極の不可逆的な劣化が進行することを確認した。 学術的な検討としてFe/CeO2比が発電性能に違いを及ぼしたが現れた機構を考察するため、得られた結果から交換電流密度と電荷移動係数を算出した。また、その結果をNi/CeO2の結果と比較した。Fe/CeO2の気孔率と交換電流密度の関係をNi/CeO2の気孔率と交換電流密度の関係を表すグラフ上にプロットすると、同一直線状にプロットが分布することがわかった。このことから、交換電流密度に対して、気孔率(すなわち単位体積あたりの三相界面長)の影響が大きく、触媒種(金属種)の違いによる影響はほとんど見られないことがわかった。一方、電荷移動係数は触媒中の触媒の体積率によりある程度整理することが可能で、触媒の体積率と電荷移動係数の間にはほぼ比例の関係があることがわかった。また、金属種の違いはその傾きの違いとして現れることがわかった。上記の結果は、コンポジット電極触媒を用いた電極の設計指針として役立つ可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進行しているが、自作TPR分析装置の稼働が遅れている。この装置はメカニズムの解明やセリア代替物質の探索への協力なツールとなるため、7月までには順調に稼働するよう、改善を行う。
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今後の研究の推進方策 |
Fe/CeO2電極触媒にはいくつかの弱点があることが明らかとなった。ただし、電池の個体差の影響もあり、信頼性のあるデータとするためにはある程度実験回数を重ねることで検証を行う必要がある。そのことを前提とした上で、以下の3点に絞って検討を行う。・過電圧増加のメカニズム解明・過電圧増加の対策検討・セリア以外の機能性酸化物の適用(機能性酸化物の化学的な効果、及びコンポジット電極触媒の設計指針について) 時間経過に伴い過電圧が増加する現象は電流密度の影響、すなわち酸素分圧の影響と推測される。つまり、電極触媒の鉄が部分的に酸化することが性能低下の要因と考えられる。この場合、電流密度の大きさにより酸素分圧が増加するため、過電圧が増加する速度・電圧変位が変化することが予想されえる。また、平衡に達したところでその増加が収まることが考えられる。現在、そのことを示す一部のデータは得られている。しかし、証明の段階までは到達していない。そこで、こちらの検討を実験的に行う。 メカニズムが明確になると、その対策が可能となる。酸素分圧による影響であれば、簡便な対策としては電流密度を制御することが挙げられるが、そのような比較的簡便な対策の他に、電極触媒の絶対量を増加させることや酸素イオンの移動速度を改善することである程度過電圧の低下を制御できる可能性がある。そのような点についても検討を行う。 また、当初の研究計画どおり、CeO2より安価な代替物質の可能性の検討も行う。こちらは、得られた性能曲線から交換電流密度や電荷移動係数を算出し、機能性酸化物が果たす役割について学術的に考察を行うことにしている。
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