研究課題/領域番号 |
16K06981
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岡田 昌樹 旭川工業高等専門学校, 機械システム工学科, 教授 (40455100)
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研究分担者 |
小原 伸哉 北見工業大学, 工学部, 教授 (10342437)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 広域連系 / 分散配置 / 遺伝的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究では,再生可能エネルギーの最適分散配置の研究に取り組んでいる.風力発電と太陽光発電の再生可能エネルギーは,風速や日射量に応じて出力が変動するため,電力需給の安定性を確保するため,導入量に制限が設けられている.本研究では,この対策として気象条件の異なる複数地点を広域連系することで平滑化する効果に着目し,設置すべき電源の種類と容量を最適化するアルゴリズムを開発している. 平滑化効果の確認作業として,北海道の都市別気象変動を算出したところ,例えば,旭川で観測された全天日射量計による出力変動の最大幅は,1日の定格出力に対して1分間でおよそ45%であったが,北海道の主要都市7箇所の値を連系した場合7.5%以下まで平滑化された. また,これまでの研究では,この最適化アルゴリズムについて,経済性を目的とした単純遺伝的アルゴリズムを用いてプログラムを設計していた.経済性の指標となるコストには,資源エネルギー庁の長期エネルギー需給見通しにおけるコストを用いることで,燃料費だけではなく,CO2対策費や資本費,政策経費などの複数の評価基準をスカラー化手法によって,解を求めてきた.しかしながら,この中の発電コストとCO2の排出量はトレードオフの関係にあるため,単一の最適解を求めても不十分と考え,発電コストとCO2排出量の2つを目的関数とするパレート最適解を求めるプログラムに設計し直した. アルゴリズムの手法として,当初,Gen-Chengの適応重付け法(awGA)を用いて,数値実験を試みたが,最適解がバランスよく出力されなかったことから,経済負荷配分として発電コストの安い石炭火力発電の発電比率を0~80%の割合で変化させる遺伝的アルゴリズムに変更して,発電コストとCO2の排出量の関係を明らかにするプログラムを開発した.解析時間は増加するが,予備解析ではバランスのよいパレート最適解を得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,再生可能エネルギーの最適分散配置を求める設計プログラムを開発するために,発電コストとCO2の排出量のトレードオフの関係を明らかにする多目的解析のアルゴリズムを組み込む研究を行った.そのため,各種条件の調査と設定,気象条件の現象解析も行い,試行錯誤を繰り返したが,研究はほぼ計画通り行うことができ,結果もほぼ満足できるものであった.新たな課題の抽出や考察も行え,おおむね順調に進展している状況である.
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今後の研究の推進方策 |
開発されたプログラムを評価するため,北海道を対象としてケーススタディを行う.広域連系する地点は,気象条件や人口のバランスから7 つ程度として,それぞれの地点には風力発電,太陽光発電を設置し,系統全体にはバックアップ電源となる石油火力発電と揚水発電,経済負荷配分の電源となる石炭火力発電を配置する. 解析プログラムへの入力データは,気象庁の地上気象観測値1分値データを用いて,広域連系する地点分作成する.例えば,風力発電のデータは,風速データに風力発電機のパワーカーブを掛けて求める.また,太陽光発電のデータは,日射量データに太陽電池の変換効率を掛けて求める.一方,需要データは,電力会社の電力供給量と熱負荷の電力需要量から求める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,平成28年度に解析プログラム用の高速演算装置を整備する予定であったが,実証実験の期間的余裕を考慮して,平成29年度に整備する予定であった簡易実証実験装置を平成28年度に調達した.そのため,平成28年度と29年度に整備する物品の内容が逆になったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には平成28年度に開発したプログラムを用いて解析するための高速演算装置を整備する予定である.
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