H30年度は,数値解析に入力するデータを検証するため,簡易実証実験装置を製作し,研究施設屋上にて,1 年間の風速と日射量を測定した。日射量および風速ともに,傾向的には気象庁のデータと同様であったが,風速値に関して30%以上の違いが出る時間帯があった。傾向的に同じであることは,本研究の目指す広域連系による再生可能エネルギーの出力平準化に対して,本解析手法が有効に扱えることを明らかにできたが,出力値の係数に違いを生じているため,分散配置する再生可能エネルギーの設備量を的確に算出するには精度不足で,設備の立地気象を数年実測し,統計的に補正する方法を確立する必要がある。 また,前年度の研究において,広域連系を図っても,再生可能エネルギーの出力を得にくい気象条件の日があると,バックアップ電源をフル稼働させなければならないこと,また,北海道では冬期間の暖房需要量が大きいことから,バックアップ電源の設備容量を冬期間に合わすと,冬期以外のバックアップ電源の設備利用率が低下して,1年を通した電力供給設備の効率化に偏りを生じるなど,その対策が必要となっていた。 そこで,H30年度は,北海道における季節間の熱需要の変動と再生可能エネルギーの出力不足を,再生可能エネルギー由来の水素燃料で調整し,再生可能エネルギーの出力変動と日間(平日と休日)や時間(朝晩と昼夜)の需要変動を,ヒートポンプ給湯器とEVで調整するシステムを用いて経済性とCO2排出量の削減効果について検討した。 解析結果,熱需要を再生可能エネルギー由来の水素燃料で賄える効果は大きく,バックアップ電源となる火力発電の設備量は,年間電力平均需要の55%程度に低減できる結果となった。なお,水素製造は再生可能エネルギーの安定出力部から利用したため,電解装置の設備利用率が80%以上を確保でき,水素製造コストの削減も多少図れる結果を得た。
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