研究課題/領域番号 |
16K06982
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
依田 英介 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (70377589)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メタン活性化 / 有機カチオン交換ゼオライト / 赤外分光法 |
研究実績の概要 |
本研究は、天然ガスやシェールガスなどに含まれるメタンを、主要な化学工業原料であるエチレンに変換する触媒を探索することが目的である。触媒の探索は、無機化合物である固体酸と有機カチオンを組み合わせた、有機-無機ハイブリッド材料を中心に行う。種々の固体酸と有機カチオンを組み合わせて触媒を調製し、調製した触媒上でメタンの活性化(メタンのCH結合の解離)が起こるかどうかを検討する。 昨年度までの研究で、有機カチオン交換ゼオライトを用いて、メタン解離の直接観測を赤外分光法により行った結果、有機カチオン交換ゼオライトはメタンのCH結合を解離する能力があることが明らかになっている。一方、有機カチオン交換Al-MCM-41は、メタンの活性化能がない可能性が示唆された。 本年度は、固体酸層状化合物を剥離して得られる固体酸ナノシートのプロトンを有機カチオンとイオン交換することで、有機カチオン交換ナノシートの調製を行った。固体酸層状化合物の層剥離の方法や、有機カチオンとのイオン交換の条件・方法を探索し、粉末X線回折の結果から層剥離ができていることが確認された。 有機カチオン交換ナノシートの触媒活性は、酪酸エチルとメタノールのエステル交換反応をテストリアクションとして行った。これまでの研究から、エステル交換反応に活性がある触媒は、メタンのCH結合の解離にも活性があることが分かっている。活性試験の結果から、有機カチオン交換ナノシートでは、エステル交換反応の活性が低いことが分かった。このことから、有機カチオン交換ナノシートはメタンの活性化能も低い可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの研究で、赤外分光法による直接観測から、有機カチオン交換ゼオライトがメタンを解離する能力を有していることが明らかになっている。また、その触媒がメタン解離能を有している可能性があるかどうかは、酪酸エチルとメタノールのエステル交換反応をテストリアクションとして確かめることができることを明らかにしてきた。有機カチオン交換ゼオライトを用いてエステル交換反応を行うと、中程度の活性で反応が進行した。そしてこの反応は、反応物がゼオライト細孔内を拡散する速度が律速になっていることが示唆された。 そこで、ゼオライトより細孔径の大きいメソポーラス化合物のAl-MCM-41を用いて、有機カチオン交換Al-MCM-41を調製した。この触媒を用いて、エステル交換反応を行ったが、有機カチオン交換ゼオライトほどの活性は得られなかった。本年度は、固体酸層状化合物を剥離して得られる固体酸ナノシートのプロトンを有機カチオンとイオン交換することで、有機カチオン交換ナノシートの調製を行った。固体酸層状化合物には、ニオブ系とタンタル系を用いた。固体酸層状化合物の層剥離の方法や、有機カチオンとのイオン交換の条件・方法を探索し、粉末X線回折の結果から層剥離ができていることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、固体酸触媒と有機カチオンの組み合わせでメタン活性化触媒の探索を行ってきた。その中で、固体酸の種類をメソポーラス材料やナノシートに変えても、テストリアクションであるエステル交換反応の活性が低いことが分かった。この原因として、有機カチオンの構造にある可能性があることが分かってきた。そこで今後は、ゼオライトやメソポーラス化合物、ナノシートのプロトンを、これまでとは種類・構造の異なる有機カチオンを用いてイオン交換を行う。調製した触媒の活性を、エステル交換反応により調べる。また、調製した触媒のキャラクタリゼーションは、赤外分光法や粉末X線回折などにより行う。 エステル交換反応で活性がある触媒を探索できたら、高圧下でメタン酸化カップリング反応を行う。触媒反応の活性試験は固定床流通系で行い、メタンからエタンやエチレンなどのC2化合物が生成するかどうかを検証する。ガスクロマトグラフでメタンの転化率やC2化合物の収率を調べることで反応に適した触媒を検討する。有機カチオン交換体を用いるのであまり高温では反応を行うことができないと考えられ、適用可能な温度範囲は限られるが、反応温度や圧力などの最適な反応条件を明らかにする。メタンの反応では、メタンの触媒への付着確率が活性に影響を与えるといわれているので、吸着が起こりやすい低温のほうが、反応が進行する可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
触媒の調製と反応活性試験用の装置作成、活性試験実施などの研究遂行に、当初の想定以上に時間を要した。また、投稿予定の論文の作成及び、投稿準備に時間を要しているため、次年度使用額が生じた。 次年度以降は、触媒調製に必要な器具、試薬の購入や高圧下での反応装置の維持・改良に必要な物品の購入、論文投稿のために使用していく予定である。
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