(大脳皮質体性感覚野における触覚刺激の情報処理) 高等動物は触覚を介して、ものの形、大きさ、運動、手触りなどの複合的な知覚を得ている。これらの複合的な知覚が脳の中でどのように処理されているかについて調べるために、任意の触覚パターンの刺激を与えられるとともに、それに対する脳の神経細胞応答を同時計測できるラットモデルを八尾寛名誉教授らの研究グループと共同開発した。まず遺伝子操作によって青色光に応答するチャネルロドプシン遺伝子をラットの頬ヒゲの根元にある感覚神経において発現するようにした。そしてコンピュータ制御下で青色光をヒゲの根元に局所照射することで、複数のヒゲ触覚を任意の時空間パターンで作り出すことに成功した。多重触覚刺激に対する大脳皮質浅層の神経細胞の入力応答特性を統計解析した結果、神経細胞は水平方向のゾーン選択的なパターンに瞬時に反応するとともに、ゾーン周囲への同時刺激によって反応が抑制されることが明らかなった。つまり刺激入力に対する空間的コントラストを脳が積極的に強調しているという情報処理の存在を明らかにした。さらに今回見つかった活動抑制のパターンは神経活動正規化モデルが予測する様式に合致することから、神経活動正規化は異種感覚統合時だけでなく、知覚受容の最初期段階である第一次知覚野でも見られる普遍的な現象であるということが確認された。 研究成果は2019年春にScientific Reports誌に掲載された。
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