研究課題/領域番号 |
16K06988
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
長谷川 潤 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (10332230)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 末梢神経 / 妊娠 / Matrix metalloproteinase / oxytocin / 炎症 |
研究実績の概要 |
成体における末梢神経軸索伸長は、組織損傷時に起こることは良く知られている。一方で、健康な成体においても末梢神経の軸索伸長が起きるのか、また起きるのであればそれはどのような状況下で起きるのかについてはほとんど解析されていない。本研究では、妊娠母体の体の構造変化に着目し、妊娠時の末梢神経軸索の伸長を検討して、その分子機構を明らかにしようとしている。 昨年度までに、出産後の乳頭で末梢神経軸索の伸長が起きていること、またその時の乳頭ではTissue inhibitor of metalloproteinase (Timp)-1の発現が上昇していることを見出していた。本年度の研究として、同時期(出産後)のその他の組織においてもTimp-1の発現上昇が見られるのかを解析したところ、膣においても出産後にTimp-1の発現上昇が見られることが分かった。この発現上昇は出産後1日目でピークを迎え、これは炎症性サイトカインの発現のピークと一致することから、出産後の膣では炎症が起きることでTimp-1の発現が上昇することが分かった。また、マウスに存在する全てのMatrix metalloproteinase (MMP)の発現を検討したところ、妊娠後期、出産後1日目にそれぞれ発現のピークを迎えるグループ、出産後1週後に向かって増え続けるものの3グループに分類されることが分かった。 また、oxytocinが乳頭への神経軸索伸長に関与している可能性についてさらに検討したところ、oxytocin受容体のアンタゴニストによって軸索伸長が阻害されることから、oxytocinシグナルが重要であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Timp-1やMMPと軸索伸長の関連を示すことに苦労していたが、MMPの発現をグループ化できたことで進展が見込める状態になった。 Oxytocinについても、Oxytocin単独投与で影響が見られなかったことから研究の進行が遅れた。阻害剤による影響が見られたことで、今後の進展が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠中および出産後の性ホルモン変動が乳頭や膣におけるMMPの発現を制御し、それが末梢神経軸索の再編成を引き起こすという仮説の検証を行っていく。具体的には、未妊娠のまた当初計画にあったTGF-βとの関連についても解析していく予定である。 昨年より明らかになってきたoxytocinによる制御機構も併せて解析していくことで、当初目的としていた妊娠時の末梢神経軸索伸長制御機構の解明に至ることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、妊娠時の乳頭における末梢神経軸索伸長の分子機構を明らかにすることを目的としてきた。研究を遂行する中で申請者らは、授乳ホルモンであるオキシトシンが乳頭への軸索伸長に重要であることを見出した。この結果は、本研究の開始時には想定しえなかった全く新しい知見である。研究計画の完遂のため、2019年度にはオキシトシンとTGF-betaの関連についてさらに解析する予定である。 使用費目としては、実験用マウスの購入、組織学的解析用試薬等の消耗品を中心に使用し、一部実験補助者の人件費として使用させていただく予定である。
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