研究課題
成体における末梢神経軸索伸長は、組織損傷時にはよくみられるが、健康な成体での神経軸索伸長はよく分かっていない。本研究では、妊娠母体の体の構造変化に着目し、妊娠時の末梢神経軸索の伸長を検討し、その分子機構を明らかにしようとしてきた。その過程で昨年度までに、出産後の乳頭や腟においてTissue inhibitor of metalloproteinase (Timp)-1の発現が上昇することを見出していた。本年度の研究として、腟でのTimp-1の発現がどのようなメカニズムによるものなのかを検討した。経時的なmRNA発現検討の結果、腟でのTimp1の発現は出産前の妊娠18日目から上昇することが分かり、出産時の機械刺激や裂傷による炎症反応ではないシグナルがTimp-1の発現を誘導していることが分かった。他のTimpファミリーメンバーはTimp-1とは異なる制御を受けていることも示唆された。このTimp-1の発現誘導については、エストラジオールの関与は低いと考えられた。一方、昨年度までの結果から、出産後の乳頭における組織変化にはオキシトシンが重要であることが分かっていたことから、腟においてもオキシトシンが関与している可能性が考えられた。一方、出産後に乳頭は肥大化するが、生まれた仔を引き離すことで乳頭の肥大化は抑えられ、この時Timp-1の発現上昇も抑えられた。したがって、仔による乳頭への刺激が組織の肥大化とTimp-1の発現誘導に重要であることが分かった。これらの結果は、授乳ホルモンであるオキシトシンが乳腺のみならず、乳頭や腟においても出産後の組織変化に重要であることを示唆しており、オキシトシンの新しい生理機能を示唆することができた。
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