研究実績の概要 |
本研究では、私が確立してきた哺乳期マウスの神経活動操作、記録技術を駆使して、同期・非同期の自発的神経活動が大脳皮質神経回路構築に果たす役割を明らかにすることを目的としている。本年度は生後初期のマウス大脳皮質で形成される大脳皮質間軸索投射(脳梁軸索投射)を研究対象として、時期特異的な神経活動操作を行い、発達時期のいつ、どのような活動パターンが脳梁軸索投射形成に関わるかを明らかにする実験を進めた。子宮内電気穿孔法を用いて神経活動を抑制する分子ツールKir2.1を皮質興奮性神経細胞に発現させ(Mizuno et al, JNS, 2007)、Tet-systemによってその発現を時期特異的に制御することで(Hagihara et al, Nature Neurosci, 2015)、生後2週の自発神経活動の重要性が明らかになった。具体的には、生後2週まで継続的にKir2.1を発現させて神経活動を抑制し続けると脳梁軸索投射は阻害されるが、生後2週にKir2.1の発現をオフにして神経活動を戻すと、軸索投射の回復がみられた。また、生後3週以降に神経活動を回復させても軸索投射の回復がみられなかったことから、軸索投射の形成・回復には臨界期があることも明らかになった。生後2週に回復させた神経活動パターンをin vivo Ca2+ imagingによって記録する実験を行うと、この時期に特有のL eventと呼ばれるネットワーク自発神経活動が回復していることが示され、このパターンの自発神経活動が脳梁軸索投射に深く関わる事が示唆された。
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