研究課題
メープルシロップ尿症(MSUD)は、分岐鎖ケト酸脱水素酵素の活性低下により、分岐鎖アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、およびバリン(これらをBCAAとする)が体内に蓄積し、これが神経障害に関わる可能性が示唆されているが、その詳細は明らかではない。これまでの解析で、健常者および疾患由来のiPS細胞より作成した2次元培養の幼若ニューロンにおいて、急性の高濃度BCAA曝露による細胞死が健常およびMSUDニューロンにおいて誘導されることを見出した。また、プレシナプス特異的なsynapsin1陽性となる神経分化誘導後77日目、MSUDニューロンにおける開口放出障害を見出していた。本年度では、長期間分散培養した健常およびMSUDニューロンにおいて、まずプレシナプス機能を解析した。その結果、304日、および608日間の長期成熟させたMSUDニューロンにおいても、著しい開口放出機能低下が見いだされた。そこで、健常およびMSUD大脳皮質様オルガノイドをそれぞれ作成し、まず、胚葉体形成から21日目において、オルガノイド内のBCAA濃度を測定した。興味深いことに、MSUD大脳皮質様オルガノイドにおけるBCAAの濃度において、健常と有意な差が見出されなかった。大脳皮質様オルガノイドにおける、ニューロンマーカー遺伝子発現を比較した結果、Foxg1やCtip2、およびsynapsin1などは、MSUDと健常において発現に差が見られなかった。一方で、DCX(幼若ニューロンマーカー)は、MSUDにおいてその発現が高く、成熟ニューロンのマーカーであるMAP2の発現は、健常群がより多く発現していた。これはMSUD大脳皮質様オルガノイドにおける神経発達の低下、もしくは遅延が生じている可能性を示していた。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Neurochem Int.
巻: 118 ページ: 217-224
10.1016/j.neuint.2018.06.009.
Int J Mol Sci.
巻: 19 ページ: E3650
10.3390/ijms19113650