研究課題/領域番号 |
16K06997
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
熊本 奈都子 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30467584)
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研究分担者 |
鵜川 眞也 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (20326135)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ASIC / 成体脳神経新生 / 神経回路形成 |
研究実績の概要 |
ASIC1aが成体脳海馬新生ニューロンのシナプス結合(回路構築)に及ぼす影響を解析する前に、ASIC1aが神経新生のどの時期から発現しているかを詳細に調べた。異なる日齢の新生ニューロンにWhole-cell パッチクランプを施行し、酸刺激(pH5.0)によって誘発されるアミロライド(ASIC1aブロッカー)阻害性の内向き電流を記録した。同時に、in situ hybridization を用いて各日齢の新生ニューロンにおけるASIC1a mRNAの発現を調べた。その結果、新生ニューロン誕生初期からASIC1aが発現していることが明らかになった。今後、嗅内皮質由来の貫通線維と海馬新生ニューロンとのシナプス形成の開始時期と成熟度が、shRNAを用いたASIC1aノックダウンにより変化するか電気生理学的に調べる。 また、ASIC1a蛋白質発現の時空間的解析を行うため、ASIC1aの内在性プロモーターにより、ASIC1aとTagRFP(蛍光蛋白質)との融合タンパク質を発現するKIマウスを作出した。現在、野生型の近交系マウスと交配を繰り返し遺伝的バックグラウンドを近交系マウスに揃えている最中であるが、解析を遂行するために十分な数のマウスが揃ったため、今後、新生ニューロンでのTagRFP-ASIC1a蛋白質の発現時期、細胞内局在を調べ、シナプス形成期に、ASIC1aが樹状突起スパイン(シナプス後膜)に存在しているかどうかを明らかにする。さらに、このマウスはCre/loxPシステムによりASIC1aのノックアウトもできるため、近交系に充分戻し交配ができた段階で、新生ニューロンのASIC1aをコンディショナルノックアウトし、記憶や空間学習能力を調べることで、組み込みへの関与の有無を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ASIC1aが新生ニューロンの誕生初期から発現していることを電気生理学的手法と組織科学的手法を用いて確認できた。また、遺伝子改変マウスの作出と繁殖も進んでいる。今後、予定通り神経回路構築にASIC1aが与える影響を電気生理学的解析と行動学的解析を使って検討する。
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今後の研究の推進方策 |
既存の神経回路への新生ニューロンの組み込みにASIC1aが作用するか検討する。具体的にはASIC1a-shRNAを発現するレトロウイルスを成体マウス海馬歯状回に打ち込み、新生ニューロンでのASIC1aの発現を抑制して嗅内皮質由来の貫通線維と海馬新生ニューロンとのシナプス形成の開始時期と成熟度の変化を電気生理学的に調べる。 また、ASIC1aとTagRFPとの融合タンパク質を発現するKIマウスを用い、新生ニューロンでのTagRFP-ASIC1a蛋白質の発現時期、細胞内局在を調べる。さらに、このマウスはCre/loxPシステムによりASIC1aのノックアウトもできるため、新生ニューロン特異的プロモーター制御下でCreを発現するトランスジェニックマウスと交配し、コンディショナルノックアウトマウスを作出して、記憶や空間学習能力を行動学的解析にて調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ASIC1aノックインマウスを用いたASIC1a蛋白質発現の時空間的解析を行うのに十分なマウスを確保するのに時間を要したため、ウイルス作成および組織学的解析に用いる試薬類や抗体の購入が予定より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
既存の神経回路への新生ニューロンの組み込みへのASIC1aの影響を調べる電気生理学的解析と、ASIC1aノックインマウスを用いた組織学的解析と行動学的解析に必要な試薬、物品を購入する。また、マウスの購入、飼育費に充てる。
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