研究課題/領域番号 |
16K06998
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
八田 公平 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (40183909)
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研究分担者 |
二階堂 昌孝 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (70344950)
中川 将司 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (00212085)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸 / ゼブラフィッシュ / 蠕動反射 / チャネルロドプシン / カルシウムイメージング / 平滑筋 / 腸神経 / 徐波 |
研究実績の概要 |
腸神経系は中枢神経系以外で独立した反射回路を持つ唯一の神経細胞集団であり、ヒトでは5億個の多様な神経細胞を含むため、第2の脳ともいわれている。本研究では、より単純な腸神経を持つゼブラフィッシュの幼生をモデルとして、個々の神経細胞の形態と伝達物質を同定すること、また、平滑筋や神経細胞のCa2+イメージングによって、蠕動運動反射にかかわる筋と神経回路の活動を可視化すること、また光遺伝学的手法を用いて、筋肉や神経細胞の腸運動を光制御し、この手法を系統的に押し進めて回路機能の全体像を解き明かし、汎用性のある単純な脊椎動物の腸神経系モデルとして確立することを目的としている。 本年度は次のような結果を得た。1。主として腸の輪走筋にGCaMP3を発現させ、食物が腸で移動するときの筋肉の詳細な活動を解析し、2つの周期の違う運動が存在することをゼブラフィッシュにおいて初めて明らかにした。周期の長いものは、食べ物の移動と密接に関わっている。おのおの、蠕動反射と徐波に相当することが示唆された。2。腸神経細胞、その他の細胞のCa2+イメージングにも成功し、腸の動きに呼応して、それぞれ特有の位相で活動することがあきらかになった。3。次に、ChR2を輪走筋で発現させることにより、体内にある腸に非侵襲的に外からスポット状に光をあて、腸の動きを制御できるかどうか調べた。その結果、光をあてた部分だけで、腸を狭窄させることに成功した。4。次に、ChR2を発現させた1~2個の神経細胞に光のスポットをあてることにより、腸の動きを引き起こす細胞や、逆に動きを止める細胞があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1。輪走筋のCa2+イメージングによって、ゼブラフィッシュの腸の動きに2つの周期があることを初めて見いだした。ゼブラフィッシュ幼生の腸が哺乳類にくらべてはるかに単純な神経系をもつにもかかわらず、哺乳類の腸の動きと基本的に共通する特徴を持ち、そのモデルとして使えることがわかった。 2。ゼブラフィッシュの腸神経系のなかの1~2個の神経細胞をChR2によって興奮させることにより、腸のさまざまな動きを人工的にひきおこしたり、逆に止めたりできることがわかった。 3。特に、腸の動きをとめる細胞については、その神経細胞の形態的特徴を解析することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
1。腸のリズムをさらに詳しく解析し、輪走筋や神経細胞を局所的に、人工的に興奮させた時に、その周期や伝搬速度など、あるいは、食物の輸送に、どのような変化がおこるかを調べる。 2。ひとつひとつの神経細胞の形態や神経伝達物質を、さらに詳しく調べ、その機能と関連づける。 3。これら多様な神経細胞が神経堤細胞からどのように分化してくるのかを、タイムラプス撮影により明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費、および、その他(論文投稿費)を使わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文が一報が改訂中、一報が準備中で、これらの出版費用にあてる。 また、国内外の学会発表が決まっており、その旅費にあてる。
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