研究課題/領域番号 |
16K06999
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
吉原 誠一 奈良県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (90360669)
|
研究分担者 |
高橋 弘雄 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20390685)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 成体神経新生 / 嗅球 / 転写因子 / 介在ニューロン |
研究実績の概要 |
マウス嗅球介在ニューロンは成体においても常に側脳室周辺で新生されRMSと呼ばれる経路を通り嗅球へ到達して新たな神経回路を形成している。滑脳症・精神遅滞の原因遺伝子であるArx遺伝子は転写因子であり、大脳皮質の介在ニューロンの移動を制御していることが知られている。このArx遺伝子の嗅球介在ニューロンにおける機能を明らかにするためにレンチウイルスを用いたArx遺伝子の機能解析実験を行った。これまでの解析からマウス新生仔の側脳室にレンチウイルスを感染させると、新生嗅球介在ニューロンに効率よく遺伝子導入できることが明らかになっている。このレンチウイルスの系を用いて新生嗅球介在ニューロンにArx遺伝子の強制発現を行うと、コントロールに比べて効率よく新生介在ニューロンが嗅球内の神経回路へと組みこまれることが明らかになった。一方、RNAiによって新生嗅球介在ニューロンにおいてArx遺伝子の発現を抑制すると、新生介在ニューロンが嗅球のRMS内で停留するニューロンの移動の異常が見られた。また、Arx遺伝子のDNA結合ドメインのみをレンチウイルスによって新生介在ニューロンに過剰発現を行うと、Arx遺伝子のRNAiの場合と同様に新生介在ニューロンが嗅球のRMS内で停留するニューロンの移動の異常が見られることが明らかになった。これらの結果からArx遺伝子は大脳皮質の介在ニューロンのみならず、嗅球介在ニューロンのRMSから嗅球への移動も制御している転写因子であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画にあるArx遺伝子の機能解析のためにレンチウイルスを用いて嗅球介在ニューロンにおいてArx遺伝子の過剰発現と発現抑制を行った。その結果、Arx遺伝子を過剰発現した場合には嗅球介在ニューロンの移動が促進され、Arx遺伝子の発現を抑制した場合には嗅球介在ニューロンの移動が嗅球内で停止していた結果が得られた。成体新生嗅球介在ニューロンの移動にもArx遺伝子が必要であることが明らかになった結果が得られ、順調に計画が進んでいるといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
レンチウイルスを用いた実験からArx遺伝子が嗅球介在ニューロンのRMSから嗅球への移動も制御していることが明らかになった。Arx遺伝子は転写因子であるため嗅球介在ニューロンの移動を制御する遺伝子の発現を制御していると考えられる。そこで、野生型及びArx遺伝子欠損マウスの嗅球からそれぞれRNAを単離してRNA Seq解析を行う。発現の変動している遺伝子群の中で、ニューロンの移動に関与すると思われる遺伝子について、野生型及びArx遺伝子欠損マウスの嗅球において実際に発現が変動しているかをin situ hybridizationによって明らかにする。発現の変動がin situ hybridizationによって確認された遺伝子についてはレンチウイルスの系を用いた機能解析実験を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
野生型とArx遺伝子欠損マウスの嗅球からRNAを抽出してRNA Seq解析を行う予定であったが、レンチウイルスによるArx遺伝子の機能解析を詳細に行う必要があり、RNA Seq解析を行う時間がなくRNA Seq解析にかかる費用分を腎炎度に持ち込むため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度において当初前年度中に実施予定であった野生型とArx遺伝子欠損マウスの嗅球におけるRNA Seq解析を行う。このRNA Seq解析にかかる試薬費、実験動物費、受託解析費に次年度使用額を用いる予定である。
|