研究課題/領域番号 |
16K07000
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
片山 圭一 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 講師 (20391914)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Small Rho GTPase / 神経細胞移動 / 大脳皮質層形成 |
研究実績の概要 |
今年度はRac1の神経細胞の移動における役割についての解析を重点的に行った。Rac1の優勢阻害型変異体を子宮内胎児脳電気穿孔法により胎児の神経細胞に強制発現すると、神経細胞の移動が著しく障害されることから、Rac1は大脳皮質神経細胞の移動に重要な役割を持っていると考えられてきた。一方で、Rac1の大脳特異的ノックアウトマウスでは大脳皮質の層構造には大きな異常は見られないとの報告もあり、先ずはRac1の神経細胞移動および大脳皮質層形成における役割を明確にする必要があると思われた。 先ず、Rac1のfloxマウスにDcx-Creベクターを子宮内胎児脳電気穿孔法を用いて導入し、移動神経細胞でRac1を欠損させ、Rac1欠損細胞の移動の様子を観察したが、移動に大きな障害は認められなかった。Rac1のホモログのRac3がRac1欠損細胞でその機能を代償している可能性を排除するため、Rac1とRac3の複合変異マウスで同様の実験を行ったが、神経細胞の移動に大きな障害は認められなかった。 Rac1ノックアウトマウスにおける神経細胞の移動の動態を再検討するため、Rac1の脳特異的ノックアウトマウスの神経細胞に子宮内胎児脳電気穿孔法を用いてEGFPの発現ベクターを導入し、神経細胞の移動の様子を詳細に解析した。Nestin-CreとGFAP-Creの2種類のCre発現マウスを用いてRac1を欠損させたが、いずれのノックアウトマウスでも神経細胞の移動には軽微な障害しか認められなかった。 以上の結果より、神経細胞の移動におけるRac1の役割はより詳細な解析を行った上で再度検討し直す必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究ではRac1は大脳皮質神経細胞の移動に重要な役割を果たしていると考えられてきたが、我々の研究によりその認識が間違っている可能性が示唆された。Rac1が実際に神経細胞の移動にどの様に関与しているのか、その結果は今後の当該分野の研究に大きな影響を及ぼす可能性が高いことから、慎重に検討を重ねて結論を導き出す必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、Rac1に加えてRhoAおよびCdc42についても同様の解析を行い、神経細胞移動におけるSmall Rho GTPaseの役割を明らかにする。 さらにそれに加えて、軸索誘導におけるSmall Rho GTPaseの役割を解析する。大脳皮質の2, 3層の神経細胞は同側または反対側の大脳皮質に、第5層の神経細胞は皮質下核や脊髄など大脳皮質以外の部位へ、第6層の神経細胞は視床へ軸索を投射することが知られている。それぞれの層の神経細胞が誕生する時期に合わせてCre発現ベクターを導入し、Small Rho GTPase (RhoA, Cdc42およびRac1)を欠損させ、遺伝子欠損細胞の軸索投射についての検索を行う。 また、樹状突起形成におけるSmall Rho GTPaseの役割についても解析を行う。大脳皮質の各層を構成する神経細胞はそれぞれ特徴的な樹状突起パターンを呈する。それぞれの層の神経細胞が誕生する時期に合わせてCre発現ベクターを導入し、Small Rho GTPase (RhoA, Cdc42およびRac1)を欠損させる。遺伝子欠損細胞について、樹状突起の方向性、長さ、分岐の数などに関する定量的な形態解析を行う。また、樹状突起上に形成されるスパインの密度と形態に関する解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は研究資金を効率的に使用した結果である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究資金は研究計画の遂行および成果発表に使用させて頂く予定である。
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