研究課題/領域番号 |
16K07001
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
竹尾 ゆかり 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (90624320)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発達 / 小脳 / 神経活動 / 樹状突起 |
研究実績の概要 |
本研究は、神経回路形成が神経活動によってどのように制御されるかを解明するため、小脳プルキンエ細胞の樹状突起の形成過程が、入力する軸索によるシナプス形成やシナプス入力によって制御される分子機構の解明を目指す。当該年度は、前年度に明らかになった、小脳顆粒細胞平行線維によるシナプス形成がプルキンエ細胞樹状突起形成に必要であることに着目し、その分子機構を検討した。平行線維シナプスの形成が著しく損なわれるCbln1欠損マウスでは、プルキンエ細胞樹状突起の本数が増加するとともに、平面状の形態が失われる。当該年度において申請者は、NMDA型グルタミン酸受容体サブユニットGluN1を、一部のプルキンエ細胞特異的に胎生期より欠損させたところ、同様の樹状突起形態異常が見られることを見出した。すなわち、GluN1が、プルキンエ細胞の樹状突起形成において必須の役割を果たすことを見出した。GluN1は、大脳皮質など様々な脳の領域で回路形成期に重要な役割を持ちながら、プルキンエ細胞においては存在意義がまったく不明であった。そのためこの発見は、神経活動依存的な回路形成メカニズムおよび、NMDA受容体の生理的役割の解明という点で、大きな驚きと発展性が見出された点で意義が大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、プルキンエ細胞においては存在意義がまったく不明であった、NMDA受容体GluN1サブユニットが、樹状突起形成に必須であることが明らかになった。そこで、今年度はGluN1が樹状突起形成を制御する分子機構を解明するための検討を行った。この検討は、本研究の当初の計画にはなかったものであるが、神経活動が樹状突起形成を制御する分子機構の解明という、本研究の目的にとっても必要な検討であるし、現在までに意義の大きい結果を得ることができている。以上のことから、当該年度の課題の進捗状況はおおむね順調であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
GluN1が平行線維シナプスの形成あるいは入力によってどのようにプルキンエ細胞樹状突起形成を制御するのか、プルキンエ細胞内の分子機構をさまざまな候補遺伝子の機能欠損によって検討するほか、研究計画の内容にそって、平行線維とプルキンエ細胞とのin vivoライブイメージングによって、シナプスおよび樹状突起形成がどのように互いに影響・制御しあいながら回路形成が完成するのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は当初の計画を変更し組換えウイルスを用いた実験やin vivoライブイメージング実験の一部を次年度に行うことにした。そのため次年度使用額が生じた。
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