研究課題
ChRFR発現陽性新生児ラットから,脳幹-脊髄標本を作製し,吸息性活動をモニターし,吻側腹外側延髄に青色LED光を照射し,呼吸リズムの変化を調べた.またこの領域の呼吸性ニューロンから膜電位を記録し,光照射刺激の効果を調べた.呼吸リズムは,LED光の照射によって,3倍以上まで促進した.吻側腹外側延髄に短時間の光刺激(0.5-1s)を行うことによって,呼吸リズムがリセットされた.ChRFRを発現しているPhox2b陽性Pre-Iニューロンは,光刺激により8.8mVの脱分極を示した.ChRFR陰性(Phox2b陰性)のPre-Iニューロンも9.1mVの脱分極を示した.さらに,ChRFRを発現している吸息性ニューロンは光刺激に応答して 10.3mVの脱分極を示した.一方,ChRFR陰性(Phox2b陰性)の吸息性ニューロンの光刺激に対する膜電位変化は,ニューロンのサブタイプによって異なった:タイプI(Pre-IからEPSPを受けるもの)は2.6mVの脱分極,タイプII(Pre-IからEPSPもIPSPも受けないもの)は0.4mVで変化なし,タイプIII(Pre-IからIPSPを受けるもの)は-2.0mVの過分極を示した.また,呼息性ニューロン(ChRFR陰性)のうち,Pre-I 及び吸息性ニューロンから抑制を受けるタイプは,-5.8mVの過分極を示した.さらにTTX存在下では,ニューロンのサブタイプに依らず,ChRFR発現ニューロンは,光刺激に応答して8.7mVの脱分極を示したが,ChRFR陰性ニューロンは膜電位変化を示さなかった (0.02mV).光刺激に対する膜電位応答は,チャネルロドプシンを発現していない呼吸性ニューロンでは,Pre-Iニューロンとのシナプス結合のタイプに依存した.これらの結果をもとに,延髄呼吸中枢の詳細な局所神経ネットワークの構築を行うことができた.
2: おおむね順調に進展している
チャネルロドプシン発現ラットの新生児摘出脳幹‐脊髄標本を用いた呼吸中枢神経回路の研究では,ほぼ必要なデータがそろったと思われる.結果の一部は,論文として,Scientific Reports (2018) 8:5435,Brain Res Bull 144 (2019) 39-45に発表した.チャネルロドプシン発現ラットを用いた呼吸中枢の局所回路詳細な解析結果は,現在論文投稿中である.
論文発表を早期に実現する.
FAOPS2019(アジア・オセアニア生理学会)が3月末に行われたため,旅費の処理が次年度に持ち越された.および現在投稿中の論文の処理が,次年度に持ち越されるため.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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