ChRFR発現陽性新生児ラットから,脳幹-脊髄標本を作製し,第4頸髄前根(C4)から吸息性活動をモニターし,吻側腹外側延髄に青色LED光を照射し,呼吸リズムの変化を調べた.さらにこの領域の呼吸性ニューロンから細胞内電位を記録し,光照射刺激の効果を調べた.呼吸リズムは,青色LED光の照射(50ms パルス幅,150ms インターバル,5-60s)によって,3倍以上まで促進した.さらに吻側腹外側延髄に短時間の光刺激(0.5-1s)を行うことによって,呼吸リズムがリセットされた.光刺激に応答して,ChRFRを発現しているPhox2b陽性Pre-Iニューロン,ChRFR陰性(Phox2b陰性)のPre-Iニューロン,およびChRFRを発現している吸息性ニューロンは,10 mV前後の脱分極を示した.一方,ChRFR陰性(Phox2b陰性)の吸息性ニューロンの光刺激に対する膜電位変化は,ニューロンのサブタイプによって異なった:タイプI(Pre-IからEPSPを受けるもの)は2 mV前後の脱分極,タイプII(Pre-IからEPSPもIPSPも受けないもの)は変化なし,タイプIII(Pre-IからIPSPを受けるもの)は-2 mV前後の過分極を示した.また,呼息性ニューロン(ChRFR陰性)のうち,Pre-I 及び吸息性ニューロンから抑制を受けるタイプは,約-6 mVの過分極を示した.さらにTTX存在下では,ニューロンのサブタイプに依らず,ChRFR発現ニューロンは,光刺激に応答して9 mV前後の脱分極を示したが,ChRFR陰性ニューロンは膜電位変化を示さなかった.光刺激に対する膜電位応答は,チャネルロドプシンを発現していない呼吸性ニューロンでは,Pre-Iニューロンとのシナプス結合のタイプに依存した.これらの結果をもとに,延髄呼吸中枢の詳細な局所神経ネットワークの構築を行うことができた.
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