研究課題/領域番号 |
16K07007
|
研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
村山 孝 沖縄科学技術大学院大学, 情報処理生物学ユニット, 技術員 (50435921)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | C. elegans / 感覚統合 |
研究実績の概要 |
神経ネットワーク上で複数の感覚情報を統合して適切に応答する情報処理プロセスは高次脳機能の根幹である。本研究では神経ネットワークにおける情報処理の普遍的メカニズムを理解するため、線虫C. elegansのアルカリ性pHに応答する味覚系を用い誘因性と忌避性の感覚情報の統合機構を解析する。線虫はpH9に誘引され、pH11を忌避する。これまでの研究からpH9-pH11の刺激に対してアルカリ性pH受容神経ASELとASHがそれぞれ誘因性、忌避性のシグナルを送ることを明らかにし、下流ネットワークでの統合による行動決定モデルを提唱した。本年度はASELとASHの下流ネットワークにおいて情報伝達および統合に関わる介在神経を同定するため、神経機能欠損変異体を用いた行動解析およびカルシウムイメージングによる各神経の活性測定を行った。 これまでに神経機能欠損変異体を用いた行動解析から1対のAIY神経を含む複数の介在神経が正常なアルカリ性pHへの応答に必要であることを見出した。ASELとASHで受容されたアルカリ性pHの情報伝達を可視化するために、ASELおよびASHから運動神経に投射するコマンド介在神経までの各神経についてカルシウムインディケーターであるGCaMP3を発現するC. elegans株を作成し、pH9-pH11の刺激に対する神経活性を測定した。このイメージング解析から、左右のAIY神経で興奮・抑制のパターンが逆であること、また各AIYの興奮・抑制パターンについても誘因性pHと忌避性pHの刺激で逆転することを明らかにした。この複雑なAIY神経の活性化パターンはAIYが環境中のpHに応じた行動選択に関わることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析から線虫の介在神経ネットワークにおいて、アルカリ性pHへの化学走性行動に必要な神経と行動選択に関係する神経を見出した。解析予定の介在神経についてカルシウムイメージング用GCaMP3発現系統の作成が終了しており、それらを用いた神経活性の測定から1対のAIY介在神経の活性が環境中のアルカリ性pHに応じて逆転することを明らかにした。ほぼ計画どおりにアルカリ性pHに対する行動選択のための介在神経を同定できたことから研究は概ね順調に進展していると考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
カルシウムイメージングと行動解析については実験系が確立しているので、当初の予定に従って神経伝達および神経修飾の変異体について行動解析、介在ニューロンのカルシウムイメージング解析を行ない感覚情報の統合に関わる遺伝子を同定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
オーダーメイドのカルシウムイメージング用マイクロ流路チャンバーついて複数の流路パターンの検討を予定していたが、初期に作成したチャンバーで十分な解析が可能だった。今後の研究の進展に応じて新たなデザインのマイクロ流路チャンバー、プラスティックシャーレなど必要になるが、現時点ではどのようなデザインにするか決定していないため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究費はカルシウムイメージング解析用チャンバーおよび実験試薬代に充当する。
|