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2016 年度 実施状況報告書

大脳基底核と小脳は、どのように運動を制御するのか

研究課題

研究課題/領域番号 16K07014
研究機関生理学研究所

研究代表者

知見 聡美  生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (30396262)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード大脳基底核 / 小脳 / 視床 / 運動制御 / 神経活動 / 光遺伝学
研究実績の概要

大脳基底核と小脳は、どちらも随意運動の発現と制御において重要な役割を果たし、その障害によって重篤な運動障害が生じることが知られている。また、どちらも大脳皮質から入力を受け情報処理のあと、視床を介して情報を戻すことにより、大脳皮質の活動を制御している。しかしながら、大脳基底核-視床投射と小脳—視床投射のそれぞれが運動情報を伝達する機構についてはよく分かっていない。本研究では、大脳基底核と小脳が運動を制御するメカニズムを解明するために、ニホンザルにおいて、ウイルスベクターを用いて、大脳基底核出力部のニューロンにハロロドプシンを、小脳出力部のニューロンにチャネルロドプシンを発現させた。サルには簡単な上肢到達運動を遂行させ、大脳基底核および小脳から入力を受け大脳皮質運動野に投射する視床ニューロンから神経活動の記録を行った。
大脳基底核から入力を受ける視床ニューロンも、小脳から入力を受ける視床ニューロンも、運動課題のイベントに関連した神経活動の変化を示した。記録しているニューロン近傍に黄色光を照射して大脳基底核出力部からの入力を遮断すると、課題に関連した活動の増大が減弱することがわかった。一方、青色光を照射して小脳出力部からの入力を賦活すると、課題に関連した活動の増大が増強されることがわかった。これらのことから、大脳基底核および小脳からの入力が、運動に関連した視床の活動において重要な役割を果たしていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、ニホンザルにおいて、大脳基底核の出力部のニューロンにハロロドプシンを、小脳の出力部のニューロンにチャネルロドプシンを効率良く発現させることに成功した。視床内にオプトロードを刺入して大脳基底核から出力を受ける視床ニューロンから記録を行いながら、近傍に黄色光照射を行うことにより、大脳基底核出力部からの情報伝達を完全にブロックすることが出来た。また、小脳から入力を受ける視床ニューロンから記録を行いながら、近傍に青色光を照射することにより、小脳出力部ニューロンのターミナルを賦活して、視床ニューロンを興奮させることにも成功した。運動課題中の神経活動の記録も順調に進んでおり、現在、黄色光/青色光の照射によって課題に関連した神経活動を変化させる実験を進めているため、当初の実験計画通りに進んでいる。

今後の研究の推進方策

現在進めている実験を継続することに加え、同様の方法を用いて、28年度とは逆に淡蒼球内節ニューロンにチャネルロドプシンを、小脳歯状核ニューロンにハロロドプシンを発現させる。視床ニューロンからオプトロードを用いて記録を行い、近傍に青色光を照射することによって淡蒼球内節からの抑制性入力を賦活する。光照射期間中に視床ニューロンの活動は抑制されるのか、光照射を切った時に視床ニューロンの発火は生じるのか、その時に筋活動は生じるのかなどに注目して解析を行う。また、運動課題遂行中にも同様に光照射を行い、神経活動の変化、筋活動の変化、課題遂行に及ぼす影響について詳細に解析することにより、大脳基底核出力の運動制御における機能を明らかにしたい。また、黄色光の照射によって小脳核からの入力を遮断したときについても、同様の解析を行うことにより、小脳出力の運動制御における機能を明らかにしたい。

次年度使用額が生じた理由

論文投稿時の英文校閲費を用意していたが、現在まだ執筆中のため、投稿まで至らなかった。

次年度使用額の使用計画

論文の執筆が終わり次第、英文校閲に出して投稿する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Mechanism of Deep Brain Stimulation: Inhibition, Excitation or Disruption? Neuroscientist, 22: 313-322.2016

    • 著者名/発表者名
      Satomi Chiken, Atsushi Nambu
    • 雑誌名

      Neuroscientist

      巻: 22 ページ: 313-322

    • DOI

      doi: 10.1177/1073858415581986

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Abnormal incormation flow through the cortico-basal ganglia pathways in MPTP-treated parkinsonian monkeys.2017

    • 著者名/発表者名
      Satomi Chiken, Atsushi Nambu
    • 学会等名
      12th International Basal Ganglia Society Meeting IBAGS-XII
    • 発表場所
      Fiesta Americana (メキシコ メリダ)
    • 年月日
      2017-03-27 – 2017-03-29
    • 国際学会
  • [学会発表] パーキンソン病の病態生理:モデルサルにおける神経活動の記録。2016

    • 著者名/発表者名
      知見聡美、南部篤
    • 学会等名
      名古屋大学・生理学研究所合同シンポジウム
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県 名古屋)
    • 年月日
      2016-09-24 – 2016-09-24
  • [学会発表] Dopaminergic transmission maintains dynamic activity changes in the basal ganglia to appropriately control movements.2016

    • 著者名/発表者名
      Satomi Chiken, Atsushi Nambu
    • 学会等名
      39th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society Symposium
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県 横浜)
    • 年月日
      2016-07-21 – 2016-07-21
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] How do the basal ganglia control thalamocortical activity?2016

    • 著者名/発表者名
      Satomi Chiken, Atsushi Nambu
    • 学会等名
      Satellite Symposium of Neuroscience 2016 “Basal Ganglia in Health and Disease”
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県 横浜)
    • 年月日
      2016-07-19 – 2016-07-19
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Basal ganglia & cerebellar control of thalamocortical activity.2016

    • 著者名/発表者名
      Satomi Chiken
    • 学会等名
      Stockholm-Okazaki Symposium “Multi-scale structures & dynamics of the basal ganglia”
    • 発表場所
      SciLife Labs (スウェーデン ストックホルム)
    • 年月日
      2016-05-12 – 2016-05-12
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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