研究課題/領域番号 |
16K07022
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
木村 有希子 基礎生物学研究所, 神経行動学研究部門, 助教 (70581122)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 前庭脊髄路 |
研究実績の概要 |
前庭脊髄路は、脊椎動物が平衡覚器で感知した重力の情報に基づいて体幹や四肢の筋肉を制御し、姿勢制御を行う際に重要な経路である。しかし、長い研究の歴史に関わらず、前庭脊髄路から脊髄内のどのようなタイプの介在ニューロンを介して、最終的に運動ニューロンが制御されているかの詳細は不明である。この研究が従来困難であったのは、実験系が複雑であったことや、前庭神経核内にある脊髄投射ニューロンや脊髄介在ニューロンの多様なタイプを同定する手段が乏しかったことのためである。本研究では、ゼブラフィッシュ幼魚を材料に用いることで、上述の困難を克服し、前庭脊髄路からどのようなタイプの脊髄介在ニューロンを介して、運動ニューロンが制御されているのかを明らかにすることを目的とする。 29年度は、魚を重力方向に対して傾けた場合に、活動量が変化する脊髄ニューロンを探すためにイメージング実験を行ったが、実験系に問題点もあり、目的のニューロンの同定にはいたっていない。30年度は実験系に改良を加え、解明を目指す。 さらに、前庭神経核内にある脊髄投射ニューロンの単一細胞の脊髄投射領域を将来的に調べるために、単一細胞の形態を簡便に調べる方法を新たに開発する共同研究に参加した。光変換型蛍光タンパク質であるDendra2を2種類の光で色変換することで、従来に比べ空間精度の良い光変換を可能にする方法で、Dendra2を発現させた多数の細胞の中から、単一細胞のみのDendra2色変換を行い、形態を観察することが可能になる。この方法は、汎用型の共焦点顕微鏡で実行可能であり、極めて実用性が高い。この方法については29年度に論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イメージングの実験系の構築が当初の構想どおりに進まず、改良を重ねている。前庭神経核内にある脊髄ニューロンの投射先を形態から調べるための技術の開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平衡感覚刺激を与えながら、前庭神経核内にある脊髄投射ニューロンのイメージングを行い、平衡感覚刺激で活動するニューロンの同定を行う。同様のイメージングを行い、平衡感覚刺激で活動する脊髄ニューロンの同定を行う。現在、平衡感覚刺激によるニューロンの活動変化とトライアル毎に異なる遊泳の強さによるニューロンの活動変化の弁別が難しく、実験系の検討が必要である。特定の脊髄介在ニューロンを遺伝学的に除去することのできる遺伝子組み換え魚を用いて電気生理学的実験を行い、前庭神経核内にある脊髄投射ニューロンと脊髄運動ニューロン及び、脊髄介在ニューロンの結合パターンを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度の研究に関しては、他研究計画のために作成した材料を用いて、既存の設備で研究を進めることができたため、当初計画で必要とした支出額を下回った。そのため、次年度使用額が生じた。30年度にイメージングの実験系の構築を進めることで、当初計画の実験を行い、次年度使用額を使用する。
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