研究課題
脱髄時における変化を検討するためにMOGの部分ペプチドをマウスに免疫注射し、実験的自己免疫性脳炎 (EAE)を生じさせた。EAEピーク時(免疫注射20日後)メタロプロテイナーゼ(MMP)の活性変化を観察した。野生型マウスではEAE発症により、MMP2とMMP9の発現上昇が認められたが、MMP12は変化しなかった。これに対し、KLK6ノックアウトマウスではEAEを惹起させても、MMP2もMMP9も発現上昇しなかった。さらに、in vitro実験でproMMP9はKLK6により活性化されることも分かった。また、EAE惹起時のMMP9発現細胞を同定するために免疫組織化学法による染色を行った。この結果、MMP9発現細胞はF4/80発現細胞と一致した。これは、MMP9がミクログリアもしくはマクロファージにより発現されていることを示す。さらにEAE免疫注射7日後の初期の段階での免疫組織化学ではMMP9陽性細胞はKLK6を発現していた。これらの事実はMMP9(加えてMMP2も)のKLK6による活性化がEAE発症に関与している可能性を示唆する。軸索と髄鞘の障害を検討するために、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。その結果免疫注射後3日において野生型マウスでは約23%の髄鞘が軸索から遊離していた。これに対し、KLK6ノックアウトマウスでは約10%の髄鞘が遊離しており、この差は統計学的に有意に異なっていた。また、SEMによる観察でも、軸索内にミトコンドリアの集積像が観察された。これらの初期変化には中枢神経内での自己抗体の作用による可能性を考え、脊髄内での自己抗体の検出を試みた。ELISA法と免疫組織化学法により、免疫3日後より抗MOG自己抗体が脊髄内で増加していることが認められた。これらの結果より、免疫応答初期には自己抗体により、異常な髄鞘が生じていることが考えられる。
2: おおむね順調に進展している
EAE発症に関与するMMPの変化とこれに対するKLK6の関与を示す所見が得られた。さらに、電子顕微鏡などによる免疫初期の変化を明らかにできた。
今後はKLK6の別の基質と考えられるneuregulin 1などの接着因子の関与を検討していく予定である。
消耗品費として使用予定である。
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Glia
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10.1002/glia.23249
Neurochemical Research
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10.1007/s11064-017-2400-z