研究課題/領域番号 |
16K07026
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 哲史 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (90334812)
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研究分担者 |
村瀬 一之 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40174289)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 形態解析 / シミュレーション / 神経回路 / 情報表現 |
研究実績の概要 |
本年度は、傍細胞記録・染色によって標識された下丘細胞の形態学的分析と、生理学的性質の関連について解析を行った。 67個の下丘中心核神経細胞(大型抑制性細胞13個、小型抑制性細胞5個、興奮性細胞49個)の樹状突起形態をNeurolucidaを用いて定量化したところ、抑制性細胞と興奮性細胞の間で様々な形態学的特徴に違いが見られることが明らかになった。さらに、細胞体周囲のコンフォーカルZスタック画像から、細胞体及び樹状突起に接触する興奮性及び抑制性終末の密度を定量化した。すると、大型抑制性細胞は樹状突起、細胞体両者の部位で他の細胞種に比べ有意に多い入力を受けることも明らかになった。一部の生理学的性質はこのような樹状突起形態や終末密度といった形態学的パラメータと相関を示した。NEURONシミュレータを用いて、大型抑制性細胞と小型抑制性細胞をシミュレーションしたところ、実際の音刺激応答性に類似した発火様式を再現することに成功した。 生理学的性質と細胞の空間分布を定量化する解析法を開発した。この方法によって、興奮性細胞について、一部の生理学的性質が細胞体の位置と関連がある、すなわち地図表現があることについても明らかになった。以上のことから、下丘中心核において、ある種の生理学的性質は細胞種による情報表現と、空間分布による情報表現の2重表現がされていることが示唆された。これらの研究内容は2018年3月に行われた日本解剖学会のシンポジウムで発表した。現在内容をまとめて論文を作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で一番労働集約的な側面が強かった、樹状突起形態および軸索形態の3次元再構築をすべて終わらせることができた。このため、全ての解析をおおむね完了させることができた。これによって最終年度は論文執筆、国際学会発表と一部の追加実験に専念することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、解析結果を速やかに論文にまとめ、投稿を行う。それと並行して、明らかになった細胞種表現・地図表現がさらに上位の中枢でどのようになるか調べるため、内側膝状体で生理学的記録を行い、逆行性標識を行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度は成果発表が予定より多くなる事になりそうであり、論文校正費を多めに確保するため繰越を行った。
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