研究課題/領域番号 |
16K07028
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白崎 竜一 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (40423149)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経回路網形成 / 軸索ガイダンス / 標的認識 / 樹状突起発達 / 交連ニューロン / 運動ニューロン / マウス / 子宮内電気穿孔法 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、マウスの脊髄交連ニューロンの軸索投射発達をモデルとして、交連ニューロンの軸索が最終標的細胞である運動ニューロンを特異的に認識する過程とその分子機構を明らかにすることを目指している。本年度は、運動ニューロンの樹状突起発達の詳細な解析を可能とさせる実験系を確立させるために、既存のCre/LoxPシステムを用いて、標的細胞である運動ニューロンをin vivoで特異的に可視化させる遺伝子発現システムの構築を行った。本研究ではまず、運動ニューロン特異的にその分化初期から発現することが知られる転写調節因子HB9に着目し、その時空間的な発現制御を担うエンハンサーとプロモーター領域をマウスのゲノムより単離した。次に、これらのエレメントの制御下でCreを発現させてLoxPの組換えを引き起こすことで、運動ニューロン特異的にその分化の初期から持続的に蛍光レポーター蛋白質 (GFP)を発現させる発現ベクターを構築させた。さらに、この遺伝子発現システムの実際のin vivoでの有効性を評価するために、これらの発現ベクターを運動ニューロンが生まれる時期のマウス胎仔脊髄に子宮内電気穿孔法により遺伝子導入し、その後の胎仔の発達ステージにおいてGFP発現の運動ニューロン特異性を HB9の共発現を指標に調べた。その結果、運動ニューロンの分化初期段階から運動ニューロン特異的なGFP発現が確認された。そこで、この遺伝子発現システムを用いて運動ニューロンを低細胞密度で可視化し、その樹状突起発達を解析した。その結果、交連ニューロンが運動ニューロンへ軸索側枝を盛んに形成させている時期に、どのような樹状突起形態をとっているのかの詳細が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、脊髄交連ニューロンの軸索が最終標的細胞である運動ニューロンを特異的に認識する過程をin vivoで明らかにしようとしている。平成28年度においては、マウス胎仔の運動ニューロンをin vivoで特異的に可視化できる遺伝子発現システムの構築に成功し、本研究の目的達成のために必須で新規性の高い重要な基礎データが得られた。したがって、当初からの計画通りに研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては、Cre/LoxP組換えシステムを用いることで、マウス胎仔脊髄の運動ニューロンをin vivoで特異的に可視化させる遺伝子発現システムを確立した。そこで次のステップとして、Cre/LoxPをVCre/VLoxP組換えシステムに移行させた遺伝子発現システムを構築し、その有効性をin vivoで評価する。さらに、Cre/LoxPとVCre/VLoxPシステムの併用により、交連ニューロン軸索と運動ニューロン樹状突起の両方を同一個体で異なる蛍光レポーター蛋白質により特異的に可視化させて解析することで、交連ニューロン軸索の標的細胞認識の過程をin vivoで明らかにする。
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