研究実績の概要 |
ヒト脳の磁気共鳴画像法(MRI)では脳座標へ脳領域名が対応した標準脳が存在する。しかしマウス脳には実用的なものが存在しない。このために機能的MRI(fMRI)データを解析するには、任意の位置を中心とする球形の関心領域(ROI)をマウスの脳内に配置して用いることが一般的であった(例えばPLoS One 10:e0121417, 2015)。この結果、他の研究者が用いたROIを再現できず、解析結果の再現性を得ることは困難だった。近年(2015年)、アレン脳科学研究所がマウス脳を3次元再構成したデータを公開した(CCFv3; common coordinate framework version 3)。脳座標に800以上の領域名が対応する。さらにCCFv3は、アレン脳科学研究所が提供する遺伝子発現や神経投射データと互換性を持つ。ただしこのCCFv3をMRIデータの解析にそのまま利用することはできない。脳部位の分割が詳細すぎて、fMRIデータ解析に不適であることや、CCFv3データはMRI画像ではなく連続2光子断層撮影法を用いて撮像されたデータであるために、MRI画像との位置合わせがそのままでは困難であるためである。そこで本研究ではアレン研究所のCCFv3標準脳をMRI解析で利用可能とすることを目的とした。「CCFv3標準脳」と「MRI脳構造画像」との画像位置合わせ方法を最適化しただけでなく、脳領域の区分け総数(860)を、研究目的に応じて解剖学的階層性を保ちつつ自在に変更可能とした。さらにAllen研究所が提供する遺伝子発現や神経投射データを用いたROI分割を実現した。本研究はマウス脳について、研究目的に応じた柔軟なROI作成を実現すると共に、研究間のROIの一貫性と再現性の向上を可能とした。
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