研究課題
前頭前皮質は、霊長類においてよく発達した脳部位であり、その大幅な拡大と質的変化がヒトに特有の高度な認知機能を可能にしたと言っても過言ではない。私の研究目標は、霊長類前頭前皮質が形成する複雑な結合ネットワークの詳細を調べ、その根底にあるネットワーク形成のルールを明らかにすることである。今回の研究課題では、皮質間のモジュラー結合が鍵だと考え、その実体を明らかにする研究を行った。 手法としては、前頭皮質へのトレーサー注入と、網羅的画像解析をシステマティックに行うことで、違う個体のデータを統合的に理解する方法を目指すとともに、複数トレーサーを同一個体に注入する手法を組み合わせることを考えた。本年度は、内側、眼窩前頭皮質など、トレーサーの漏れが起きやすい部位への注入方法を確立し、それらの領域への注入を行った。同時に無蛍光のBDA (biotynilated dextran amine)を注入し、回収切片を組織染色することで、2重染色を行い、前頭皮質と、頭頂皮質、帯状回などとの相互結合関係を詳しく調べた。本年度は、さらにsmFPを使った新しい無蛍光トレーサーの開発及び、逆行性AAVベクターを使うことによる、経路特異的プロジェクションマッピングを試みた。基礎技術の確立は、順調に進み、データ取得も予定通り進み、本研究の成果の一部は、学会等において発表した。しかし、論文化にあたっては、画像データ解析に時間がかかっており、今後共同研究者と議論しながら進めていきたい。またカラムモジュール構造を明らかにする手法として、脳透明化を組み合わせた研究を共同研究者と行なっており、現在論文化を目指している。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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