研究課題/領域番号 |
16K07039
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桑原 知樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10533903)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / リソソーム / LRRK2 / オートファジー / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
優性遺伝性パーキンソン病の病因遺伝子産物であるLRRK2(Leucine-rich repeat kinase 2)は障害を受けたリソソーム膜上にリクルートされることをこれまでに見出している。その局在変化の挙動がオートファジー関連因子LC3と類似していたため、局在変化のメカニズムとして非定型オートファジー経路が関与する可能性に着目し、関連因子のノックダウンや薬理学的阻害を試みた。その結果、非定型オートファジー経路が確かにLRRK2の局在変化を制御することを発見した。また免疫電子顕微鏡解析から、LRRK2が一部の肥大化したリソソーム表面膜上に局在することを確認した。 さらに障害を受けたリソソーム上でLRRK2とともにリクルートされる因子の探索を行い、複数のRabファミリーGタンパク質を同定した。リソソームの生化学的分画実験から、LRRK2とRabタンパク質がリソソーム障害時に特異的にリソソームに局在化することも確認した。LRRK2を阻害するとリソソーム障害が増悪することから、LRRK2はリソソームの恒常性維持に働き、そこにRabタンパク質が関与する可能性が考えられた。 さらにLRRK2のリソソーム障害における役割をin vivoで検証するため、リソソーム阻害剤をマウス腹腔内に反復投与したところ、LRRK2ノックアウトマウス腎臓の一部において特異的に病変が生じることを見出した。以上より、LRRK2がリソソーム障害時に何らかの機能を果たすことがin vitro, in vivoの両面から明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リソソーム障害時におけるLRRK2の局在変化のメカニズムとして、新たに非定型オートファジー経路の関与を明らかにした。またリソソーム障害時にLRRK2とともに局在変化する因子の同定を目指した結果、Rabファミリータンパク質を同定することに成功した。LRRK2のin vivoにおける役割の一端についてもマウス個体を用いて明らかにした。以上の結果は当初の計画におおむね沿うものである。
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今後の研究の推進方策 |
リソソーム障害時にLRRK2とともにリクルートされる分子として一部のRabタンパク質を同定した。これらのRabタンパク質はLRRK2の下流で機能する可能性を見出しつつあることから、今後はRabがどのようにしてLRRK2による制御を受け、リソソーム恒常性維持に働くのか、そのメカニズムを明らかにする。また非定型オートファジーとLRRK2とをつなぐ分子メカニズムも不明であり、関連する可能性のある分子の関与について今後検討を加える。 さらにLRRK2のin vivoにおける役割としてリソソームストレスへの関与を見出したが、パーキンソン病発症との関連については不明である。パーキンソン病脳内において蓄積するαシヌクレインタンパク質やその凝集体はリソソームストレスを引き起こすとの報告から、αシヌクレイン代謝や凝集過程におけるLRRK2の役割についてもin vitro, in vivoの両面から明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は培養細胞を用いた実験が特に進んだため細胞実験を集中的に行った。そのため、マウス個体を用いる大掛かりな実験は次年度以降にメインに行うこととなり、次年度に必要経費を繰り越す必要性が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
野生型マウスとLRRK2ノックアウトマウスに加えて変異型LRRK2 BAC Tgマウスを用いて、様々なリソソームストレスへの応答性や脆弱性について検討する。またパーキンソン病脳に特徴的なαシヌクレインタンパク質の凝集や代謝過程におけるLRRK2の役割についても、in vivo, intro両面から明らかにしていく。
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