研究実績の概要 |
本研究は、ヘテロリボ核タンパク質TDP-43のタンパク質恒常性の崩壊によって誘発される脊髄運動ニューロンの機能障害のメカニズムを解析する為のゼブラフィッシュ筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルを構築し、ALSにおける運動ニューロン変性の分子基盤の理解を深めることを目指している。さらに、脊髄運動ニューロンにおけるTDP-43毒性が、PI3キナーゼの活性化によって緩和される、という独自に見出した現象のメカニズムを解明し、PI3キナーゼ経路の機能修飾という視点から、ALS 治療戦略の構築の可能性を検討することを目指している。 H28年度は、ゼブラフィッシュにおいて脊髄節あたりに一つ存在する脊髄運動ニューロンサブタイプCaPにおいて、Gal4依存的に活性化型PI3キナーゼ(zp110*)とカルシウムプローブGCaMPを、共に発現するトランスジェニック系統Tg[prdm14-GAL4, zp110*-UAS-GCaMP]系統を作製した。さらに、同様の条件下でCaP細胞にTDP-43を過剰発現するTg[prdm14-GAL4, UAS-TDP-43, zp110*-UAS-GCaMP]系統を作製した。二光子励起顕微鏡によるCaPのカルシウムイメージング法を用いて、CaPの神経興奮性の比較を行ない、PI3キナーゼの活性化がTDP-43過剰発現による神経興奮性の低下を緩和することを確認した。また、脊髄運動ニューロンのトランスクリプトーム解析の前段階として、ほぼ全ての脊髄運動ニューロンがEGFPでラベルされ、なおかつ、TDP-43を過剰発現するTg[mnr2b-Gal4, UAS-EGFP, UAS-TDP-43-RFP]稚魚を構築し、フローサイトメトリーを用いて、GFP・RFP陽性の細胞として、TDP-43RFPを過剰発現する脊髄運動ニューロンを分離するための条件検討をおこなった。
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