研究課題/領域番号 |
16K07048
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
三五 一憲 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, プロジェクトリーダー (50291943)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経科学 / 脳神経疾患 / 糖尿病 / 細胞・組織 |
研究実績の概要 |
正常マウス・ラットならびに遺伝子改変マウス末梢神経組織より自発的不死化シュワン細胞株を樹立し、諸種ニューロパチーの病態解明・治療法開発を進めている。 1. 正常Fischerラット由来シュワン細胞株IFRS1と後根神経節 (DRG) ニューロンとの共培養系を用いて、抗不整脈薬アミオダロンによる脱髄誘導機構にオートファジー障害が関与することを明らかにした(Niimi et al., Eur J Neurosci 2016; Med Res Arch 2017)。 2. 免疫介在性ニューロパチーや運動ニューロン疾患の病態モデルとして、株化運動ニューロンNSC-34とIFRS1の共培養系を確立した (Takaku et al., in preparation)。 3. ポリオール代謝亢進を介した糖尿病性神経障害の発症機構解明のため、正常およびアルドース還元酵素 (AR) 遺伝子欠損マウスよりシュワン細胞株1970C3およびIKARS1を樹立した。両細胞株はシュワン細胞としての特性を保持しており、IKARS1ではAR酵素機能の欠失を認めた。またIKARS1では1970C3に比しポリオール代謝系酵素 (sorbitol dehydrogenase, ketohexokinase) のmRNA発現低下とともに、アルデヒド代謝系酵素aldo-keto reductases (Akr) のmRNA発現上昇がみられた。さらに反応性アルデヒド4-hydroxynonenal負荷に伴い、IKARS1ではAkr1b7及びAkr1b8のmRNA発現上昇がみられた。AR欠損に伴いポリオール代謝系が不活化されるとともに、Akr1b7やAkr1b8等がARのアルデヒド解毒作用を代償する可能性が示唆された(Niimi et al, in preparation)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) DRGニューロンーIFRS1共培養系を用いて、アミオダロンによるシュワン細胞死・脱髄誘導機構を解明し、原著論文や総説として発表できた。 2) NSC-34ーIFRS1共培養系の確立に成功し、原著論文を執筆中である。また本共培養系を用いて、連携研究者・海田と免疫介在性ニューロパチーに関する共同研究を計画している。 3) 1970C3およびIKARS1の特性解析が進捗し、ARの糖尿病性神経障害の病態への関与や、末梢神経系における生理機能を明らかにしつつある。原著論文を投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
1) DRGニューロンーIFRS1共培養系を用いて、アミオダロン以外の薬剤(ジクロロ酢酸、腫瘍壊死因子中和抗体等)による脱髄誘導機構を解析する。 2) NSC-34ーIFRS1共培養系に免疫介在性ニューロパチー患者血清を投与し、脱髄誘導機構を解析する。 3) 1970C3およびIKARS1の特性解析を進め、ARの糖尿病性神経障害の病態への関与を詳らかにするとともに、AR阻害薬や外因性ピルビン酸の神経障害治療薬としての効能を検討する。 4) 最終糖化産物受容体 (RAGE) 遺伝子欠損マウスよりシュワン細胞株を樹立し、グリケーションを介した糖尿病性神経障害の発症機構解明を進める。 5) in vitro系に加え、糖尿病モデル動物等のin vivo系を導入し、多角的な解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理化学用品の一部が、予想価格よりも安価で購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
使用予定の試薬・メディウム購入に使用する。
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