研究課題/領域番号 |
16K07053
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
武井 延之 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (70221372)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | mTOR / 細胞サイズ / neural stem cell / シグナル伝達 / 脳形成異常 / 蛋白合成 / 神経栄養因子 / iPS |
研究実績の概要 |
①神経幹細胞と神経細胞におけるm TO R シグナルの違いとそれを誘起する因子を解明する。1)シグナルの違い:昨年度はラットのneurosphere を用い、分化誘導後のmTORシグナルを検討したが、本年度はそれに加え、ヒトiPS由来神経幹細胞を用い、同様の検討を行った。iPS由来細胞では神経分化により時間がかかるが、mTOR シグナルの変動が、ラットの細胞と(ほぼ)同様に確認できた。iPS由来神経幹細胞の分化状態に関しては、機能的分化の度合いを測る指標の探索が続いているが、細胞内シグナルの変化を確立できれば、新たな知見となる。2) 細胞外因子の作用:mTORシグナルを活性化する因子としては、従来明らかにしてきたBDNFをはじめとする成長因子の他、基質接着因子にも活性を認めた。阻害因子に関しては、mTOR阻害剤であるrapamycinをコントロールとしてスクリーニングを行い、AMPKに作用する分子などいくつかの低分子化合物の効果を確認できた。詳細については現在検討中である。3) 細胞サイズの比較:ラットの細胞で行った実験と同様の実験をヒトiPS由来神経細胞で行っている。パッチクランプ法による膜容量(capacitance)の測定では分化の状態による変化に注目している。4)蛋白合成、脂質合成:mTORシグナルの活性化により、蛋白合成の亢進し、その結果細胞サイズが増大することが Cap-依存性蛋白合成阻害剤(4E-GI)を用いた実験により明らかとなった。 ②ゲノム編集:ゲノム編集に関しては、相変わらず難航しているため、通常のmTOR活性型変異体の過剰発現を行い、安定発現株を複数系統作成した。今後、この細胞を用いて細胞サイズの変化を調べるとともに、ゲノム編集に関しても引き続きトライしてゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度の研究はおおむね当初の計画通りに進展している。当初の危惧どうり、ゲノム編集実験が難航している一方で、ヒトiPS由来神経幹細胞、分化神経細胞の解析が進んだことが特記される。
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今後の研究の推進方策 |
①病態モデル:以下の2つの実験を継続して行う。 1)子宮内エレクトロポレーション法により、mTOR活性型変異を胎仔に発現させ、細胞の形態、サイズを解析する。2)mTOR活性型変異体を安定発現した神経幹/前駆細胞を胎仔(新生仔)の脳内に移植し、in vivoでの成長/変化を解析する。 ②細胞サイズ制御の基盤: 蛋白合成の亢進と細胞サイズの増大は当然のことと考えられているが、そのメカニズムに関しては曖昧であり、今後脂質合成との関連と共に明らかにしたい。これまではmTORシグナル関連の蛋白質の変動に注目してきたが、mTORシグナル活性化によるグルコース取り込みの亢進が明らかとなったので、細胞内構成成分、特に脂質と炭水化物の変動についてメタボローム解析を行う予定である(共同研究の打合せ済み)。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度はほぼ計画通りの支出であったが、前年度分の節約分を最終年度に持ち越すことができた。限られた資金を有効に活用できた。
(使用計画)最終年度は試薬等の支出の増加が見込まれることに加え、論文の英文校正、投稿費(APC)に使用する予定である。
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