研究課題
神経損傷後のミクログリア活性化には、神経損傷を感知するミクログリアの膜上受容体が重要な役割を担うと考えられる。本研究では、ミクログリア活性化を制御する分子として、1回膜貫通型タンパクDAP12に着目した。DAP12は脳内でミクログリア特異的に発現することが知られている。DAP12は若年性認知症Nasu-Hakola病の原因遺伝子であることから、ミクログリアの活性制御に関わることが想定された。マウスL4脊髄神経の切断により神経因性疼痛モデルを作成し、DAP12を介するシグナルが、脊髄後角におけるミクログリア活性化と疼痛に与える影響を解析した。まず、L4神経切断後の脊髄後角においてDAP12がミクログリア特異的に発現していることを免疫組織化学で確認した。von Freyテストにより、野生型マウスに比べDAP12ノックアウトマウスでは疼痛が有意に軽減されることを明らかにした。その原因として、DAP12ノックアウトマウスでは、脊髄後角においてミクログリア数が減少すると共に炎症性サイトカインの発現が顕著に低下していることを見出した。DAP12は細胞外ドメインが短いため、リガンドを認識するDAP12共役受容体と複合体を形成し機能すると考えられている。そこで、ミクログリア活性化における機能的なDAP12共役受容体の特定を行った。免疫系で明らかにされているDAP12共役受容体のうち、脊髄後角においてミクログリア特異的に発現するTREM2に着目した。非損傷マウスの髄腔内へTREM2刺激抗体を投与した結果、脊髄後角において炎症性サイトカインの発現が上昇すると共に、足底に疼痛が現れた。DAP12ノックアウトマウスではその現象は見られなかったことから、TREM2/DAP12複合体を介するシグナルがミクログリア活性化を促進している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
神経因性疼痛(アロディニア)モデルを用い、DAP12がミクログリアの数を増加させると同時に炎症性反応を強めることを明らかにした。また、DAP12はTREM2と共役して機能することを見出した。そして、それらの結果を論文発表した。当初の計画は十分に達成したと考えられる。
既知のDAP12共役受容体のうち、TREM2以外にSiglec-Hも脳内でミクログリア特異的に発現することを見出している。そこで、神経損傷後のミクログリア活性化におけるSiglec-Hの機能を、主にSiglec-Hノックダウンマウスを用い解析する。また、Siglec-Hは、良く用いられているミクログリアマーカーIba1やCD11bとは異なり、脳内マクロファージには発現しないという結果を得ている。信頼性の高いミクログリアマーカーと考えられるため、その発現特性についても詳細に解析を行う。
計画通りに研究が遂行でき、実験の条件検討や人件費にあまり費用がかからなかったなかったため。
分子生物学的実験で難航が予想される。主にその消耗品に補填する予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Glia
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1002/glia.23123
Neuroscience
10.1016/j.neuroscience.2017.03.028
Sci Rep
巻: 6 ページ: -
10.1038/srep25317
10.1038/srep28512
J Neurosci
巻: 36(43) ページ: 11138-11150
10.1523/JNEUROSCI.1238-16.2016
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/Anatomy2/