DAP12は細胞外ドメインが短いため、細胞外ドメインが長くリガンド認識鎖として働く「DAP12共役受容体」と複合体を形成することで機能すると考えられている。前年度までに、既知のDAP12共役受容体のうちTREM2とSiglec-Hが脳内でミクログリア特異的に発現すること、また、TREM2/DAP12複合体を介するシグナルはミクログリアの炎症性作用を促進するのに対し、Siglec-H/DAP12複合体はミクログリアの炎症性作用を抑制することを見出した。TREM2に関してはリガンドが同定されているが、Siglec-Hについては同定されていない。そこで、本年度はSiglec-Hリガンドの同定を目指した。脳や初代培養神経細胞の抽出物からSiglec-Hと共沈するタンパク質を探索したが、リガンド候補タンパクは得られなかった。Siglecファミリー分子はシアル酸を含む糖鎖を主なリガンドとすることが知られている。そこで、他施設と共同で、リガンドの可能性を持つ糖鎖とSiglec-Hの結合を表面プラズモン共鳴実験により調べた結果、シアル酸含有糖鎖A2G'2FがSiglec-Hと結合することを見出した。A2G'2Fは発生期の脳で多量に含まれるため、発生期におけるミクログリアの機能制御にSiglec-Hが関与する可能性が示唆された。今後、A2G'2F糖鎖を持つコアタンパク質を同定することにより、Siglec-Hを介するミクログリア活性制御メカニズムの詳細が明らかになると期待される。
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