研究課題/領域番号 |
16K07061
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐々木 幸生 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (10295511)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 横浜市 / 神経生物学 / 脆弱X症候群 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
脆弱X症候群の原因遺伝子産物Fragile X mental retardation protein (FMRP) の神経ガイダンスにおける役割を解明する目的で、ガイダンス分子の1つであるSemaphorin3A (Sema3A) に対する応答を検討した。その結果、Sema3A刺激で成長円錐内にユビキチン化が惹起すること、また、刺激後成長円錐内でFMRPの減少が生じ、それが種々のユビキチン-プロテアソーム阻害剤で抑制されることが明らかとなった。従って、Sema3AによりFMRPがユビキチン化され分解されることが示唆された。次に、FMRPのユビキチン化の分子機構を解明する目的で、ユビキチン化関連遺伝子のcDNAライブラリーからFMRPの分解を誘導するクローンをスクリーニングしたところ、1クローンを選抜できた。この遺伝子産物はFMRPのユビキチン化を惹起する活性を持っていた。このクローンはまた、オートファジーにも関与するタンパク質であり、培養細胞に発現させると内在性のFMRPを粒子化し、消失させることが明らかになった。FMRPのようなRNA結合タンパク質は細胞ストレスによりストレス顆粒を形成し、その後、ユビキチン化され、オートファゴソームにより分解されると考えられている。そこで、細胞内ストレスによりFMRPがストレス顆粒を形成するかを検討したところ、ストレス顆粒マーカーであるGAP SH3 Domain-Binding Protein 1 (G3BP) と共局在すること、また、共局在にはFMRPの主にC末端領域が重要であることが明らかになった。今後は、ストレス顆粒→ユビキチン化→オートファジーにいたる分子機構を明らかにし、FMRPが関与する神経回路形成における役割を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、FMRPの分解に関与するタンパク質を同定することが出来た。同定したタンパク質がオートファジーに関与することが報告されているので、今後、FMRPのユビキチン化とオートファジーの関連についても検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ストレス顆粒→ユビキチン化→オートファジーにいたる分子機構を解明するために、ストレス顆粒マーカー、オートファジーマーカーをGFPと融合させたタンパク質を細胞に導入し、ライブイメージングでその過程を観察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
同定したクローンがユビキチン化に関与するだけでなく、オートファジーに関与する遺伝子であったため、当初の計画に加えて、オートファジー等の解析が加わった。そのため、当初計画の実験に追加する実験が必要となったので、昨年度後半に前倒し請求を行った。追加実験の為に抗体、培養試薬等を購入したが、一部の試薬の納期が次年度になった。その結果、当初の繰越金額600,000円の約.5%にあたる45,067円を次年度に持ち越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予算と持ち越すことになった45,067円を合算し、FMRPとユビキチン化、凝集体の関連を明らかにする研究を継続する。そのために、①同定した遺伝子が単独でユビキチンリガーゼ活性を持つか否か精製タンパク質を用いて検討する、②FMRPを含む凝集体の正体を明らかにするために、ストレス小胞やオートファゴソームのマーカーを用いて細胞染色を行う、の二種類の実験を行う予定である。
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