研究実績の概要 |
大脳皮質錐体細胞におけるSema3A依存性の基底樹状突起形成に受容体型チロシンホスファターゼPTPδが関わることを報告した。またPTPδはチロシンキナーゼFynのC末端のY527を脱リン酸化して活性化することを見いだした。変異マウス脳皮質の表現型解析からSema3A,PTPδ, Fynが連関して樹状突起形成を促進することを明らかにした(J Neurosci 37:7125-7139 (2017))。 SIRPαをPTPδの脱リン酸化基質として見いだした。SIRPαのチロシンリン酸化pY501に対する特異抗体を用いて野生型、PTPノックアウトマウス脳の免疫染色を行った。リン酸化SIRPαは嗅球、Rostral Migratiory Stream(RMS)、錐体路に多く局在した。これらのシグナルはホモ体で増加した。脊髄後根神経節(DRG)において SIRPαのRNAi ノックダウンはSema3Aの退縮応答を阻害した。次にSIRPαのリン酸化チロシン残基を全てPheあるいはGluに置換した変異体をDRGに導入した。しかしいずれの変異体もSema3A応答を阻害しなかった。一方、SIRPαの細胞内領域を短縮した変異体はSema3A応答を阻害した。SIRPαはDRGにおいてチロシンリン酸化/脱酸化以外の機構でSema3A情報伝達に関与すると考えられた。 Sema3A下流シグナルのCRMP1はFynによりY504をチロシンリン酸化される。Y504をPheに置換したCRMP1(Y504F)はDRGのSema3A退縮応答を阻害した。さらにCRMP1(Y504F)の過剰発現は皮質錐体細胞の基底樹状突起発達を阻害した。CRMP1はY504のリン酸化修飾を介してSema3Aの情報を伝達すると考えられた。 PTPδ変異マウスにおいて小脳登上線維の退縮を見いだし、現在解析を進めている。
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