研究課題
線虫C. elegansでは、神経伝達物質のオクトパミンはSIAと呼ばれるニューロンでSER-3とSER-6の二種類のオクトパミン受容体に作用しCREBの活性化を起こす。本研究では、この細胞を用いて、類似した受容体が複数存在することの生理的な意義を明らかにすることを目的とした。これまでに、カルシウムイオン濃度を測定できる蛍光たんぱく質プローブの遺伝子をSIA特異的に発現する株を用いて、オクトパミン刺激によってSIAニューロンでのカルシウム濃度の上昇が見られることを明らかにしていた。Gq共役型のSER-3、SER-6あるいはGi共役型のOCTR-1受容体、それぞれ単独の変異体、あるいは2重変異体についてはカルシウム反応が見られるが、全てのオクトパミン受容体の欠損させた3重変異体では反応が見られないことを確認した。以上の結果から、SER-3あるいはSER-6単独の変異体でも反応が見られなくなるSIAでのCREBの活性化とは異なり、SER-3あるいはSER-6の一つの受容体がなくなってもカルシウム反応が引き起こされ、全ての受容体が欠損したときのみカルシウム反応が見られなくなることを明らかにした。この結果から、CREBの活性化とカルシウム反応では必要となる受容体が異なることが明らかになった。このSIAニューロンでのオクトパミンシグナル伝達は、運動量の制御を行うことを見出している。ドーパミン欠損株では、SIAニューロンでのオクトパミンシグナル伝達が亢進し、その結果、運動量が上昇することを明らかにしており、この現象には、SIAニューロンでのカルシウム反応と同様にSER-3、SER-6およびOCTR-1が関与している。この結果から、複数のオクトパミン受容体の関与するSIAニューロンの反応が運動量の制御を行うことが明らかになった。
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The Journal of Neuroscience
巻: 39 ページ: 4668~4683
10.1523/JNEUROSCI.2985-18.2019
http://www.saitama-med.ac.jp/uinfo/yakuri/index.html