研究課題
ガス分子は、高分子の構造内に比較的容易に浸透し、金属原子や鉄-硫黄クラスターを有する補欠分子族への結合や、低分子の官能基に特異的に結合することにより生物活性を発揮する。ガス分子の作用は、可逆的・即効的でかつ複数の標的をもつことを特徴とするが、それ故に、複数のガス分子とその受容蛋白質が時空的に複雑な相互作用を形成する生体内において、ガス分子の生成・受容及び情報伝達機構と生理作用との因果関係は十分に立証されていない。本研究は、脳で恒常的に産生される一酸化炭素(CO)の役割を、二光子励起顕微鏡を用いin vivoで解析した。野生型(WT)とCOの量が半分に減弱したHO-2KOマウスを用い、異なる微小血管レベル(e.g. 毛細血管、前毛細血管、細動脈)で惹起される虚血応答をreal-timeで精査した。低酸素性血管拡張は、基質(O2、グルコース)の要求が最も高い神経細胞の近傍の血管から拡張シグナルが伝播し、十分のCOが存在する野生型マウスでは顕著に増幅されると予測した。血管径測定に加えて、赤血球速度を計測し血流量を算定した。毛細血管径は、野生型とHO-2KOマウスの間で差が認められないのに対し、赤血球速度はHO-2KOで顕著に早いこと、つまりCOがないと基底状態で血流量が増加することが示された。CNSで恒常的に産生されるCOの役割は、基底状態で統合的な抑制因子として働くことのみならず、持続的抑制によりストレス応答に必要な予備能を担保し、neuron発振型のfail-safe regulationの根幹を担うガスであるという一つの証左を得るに至った。
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ASN Neuro
巻: 10 ページ: 1759-1762
10.1177/1759091418775562
http://www.sci.keio.ac.jp/en/people/detail.php?eid=00181&katagaki=3&bunya2_color=6&status=1