研究課題/領域番号 |
16K07075
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
河合 克宏 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (00553653)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IRBIT / LongIRBIT / pH / 塩素イオン / 神経可塑性 |
研究実績の概要 |
新規IRBIT結合蛋白質として同定したAnion Exchanger 2/3 (AE2/3)へのIRBITおよびLongIRBITスプライシングバリアントの結合および活性制御への寄与について解析を進めた結果、IRBITおよびLongIRBITのスプライシングバリアント(IRBIT ファミリー)は、AE2/3に対して異なる結合親和性を示す事を見出した。さらに、AE3部分欠損蛋白質を発現するコンストラクトを作成し、細胞株を用いた共免疫沈降法により解析した結果、IRBITファミリー結合部位がAE3のN末端細胞内部位の複数の領域にわたる事が分かった。このことは、IRBITファミリーとAE3が立体的な結合面を形成していると考えられ、IRBITファミリーとAE3の比較的強固な結合の理由と推測される。また、IRBITファミリーの中でAE3に対して最も親和性の高いLongIRBIT バリアント3 (LongV3)は、過剰発現によりAE3の細胞内局在に影響を与え、細胞表面に存在するAE3の量を減少させる事を表面ビオチン化法により明らかにした。また、細胞内部に取り込まれたAE3とLongV3の複合体は、初期エンドソームのマーカーと共局在することがわかった。さらに、LongV3の過剰発現系と細胞内pH イメージおよび細胞内塩素イオンイメージングにより、LongV3の過剰発現が、AE3の活性を有意に低下させる事がわかった。これらの結果から、LongV3はAE3細胞内局在制御を介してAE3の活性調節に寄与する事を明らかにした。また、東京大学神経ネットワーク分野との共同研究により、IRBITノックアウトマウスの電気生理学的解析を進めた結果、特定の条件下においてIRBITノックアウトマウスは僅かだが、有意に長期可塑性に異常がある事を、明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IRBITファミリーによるAE2/3の活性への影響および制御機構について、結論付けるに十分な結果を得ることができた。また、IRBITノックアウトマウスの電気生理学的解析に関しても解析を終了し、IRBITノックアウトマウスにおける異常を見出すに至った。現在、これまでの研究結果をまとめて論文を準備中である。さらに、新たなIRBITファミリーの結合蛋白質として、異なる制御機構の塩素イオンチャンネルを同定しており、これについても最終年度で解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
IRBITファミリーの新規相互作用分子として同定した塩素イオンチャネルに関して、IRBITファミリー発現の効果を検討する。さらに、IRBITおよびLongIRBITノックアウトマウス由来の海馬神経細胞を用いて、細胞内塩素イオン動態をFRETを用いたイメージにより解析を進める。また、IRBITおよびLongIRBITダブルノックアウトマウスの胎児は胎生致死であり、発生段階における奇形を示すことを見出したので、その原因となる分子機構解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で使用しているIRBITおよびLongIRBITのダブルノックアウトマウスが、胎生致死の表現型を示す事がわかり、解析には胎児の確保が必要となったため、十分な数の胎児確保のための親マウスの繁殖に時間がかかったため。翌年度分として請求した助成金と合わせて胎児マウスの解析等に使用する。
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