研究課題/領域番号 |
16K07077
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
前田 信明 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (90202308)
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研究分担者 |
三枝 智香 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (00280800)
神村 圭亮 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主席研究員 (30529524)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロテオグリカン / ヘパラン硫酸 / 神経栄養因子 / 神経回路 / ショウジョウバエ / 神経筋接合部 |
研究実績の概要 |
プロテオグリカンは硫酸化グリコサミノグリカンがコア蛋白質に共有結合した複合糖質であり、細胞表層及び細胞外基質の主成分として重要な役割を果たしている。プロテオグリカンには、その糖鎖部分及びコア蛋白質部分を介して、成長因子やモルフォゲン等、種々のシグナル分子が結合し、その活性を制御することが知られている。すなわち、プロテオグリカンは、多様なシグナル分子が機能する場を構築する環境因子として機能していると考えられる。我々は、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)が構築する情報伝達ネットワークを解明することを目指して、プロテオーム解析によりショウジョウバエ神経筋接合部(NMJ)に存在するHSPG結合蛋白質を網羅的に同定することを試みた。その結果、細胞接着因子等、多数のHSPG結合蛋白質を同定した。 本年度は、その内の一つSpatzle (Spz)に注目して解析を行った。Spzは、神経栄養因子様の構造を示す分泌蛋白質であり、Tollを受容体としてNMJ形成を制御することが知られている。そこで、免疫沈降実験を行い、SpzがGPIアンカー型のHSPGであるグリピカン(Dlp)と結合すること、さらにDlpがTollと相互作用することを見出した。Spzは膜結合型のシンデカンとは相互作用を示さず、その結合には明確な特異性が認められた。DlpとTollの共発現細胞をSpzで刺激すると、これら三者が一緒に細胞内に取り込まれることから、DlpとTollは、Spzに対する受容体複合体を形成している可能性が考えられる。Spz及びDlpのショウジョウバエ変異体は、シナプス終末の増加等、互いに類似したNMJの異常を示す。さらに、遺伝学的相互作用実験により、両者が同一の情報伝達経路に寄与していることが明らかになった。これらのことは、DlpがSpz-Toll経路を修飾する制御因子であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HSPG結合蛋白質の同定とその機能解析について、ほぼ研究計画通りに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、DlpによるSpz-Toll経路の制御機構をさらに詳細に解析する。すなわち、Dlp、Spz及びTollの発達期NMJにおける局在を免疫組織化学的に詳細に解析する。ショウジョウバエNMJの形成は、運動ニューロンの神経活動依存的に制御されていることが知られている。そこで、運動ニューロンの神経活動を亢進させた時に、Dlp、Spz及びTollの局在にどのような変化が生じるかを解析する。さらに、これらの遺伝子の単独変異体と二重変異体の神経活動依存的なNMJ形成を解析し、その機能的共役関係を明らかにする。 平成30年度は、以上の解析をモデルとして、プロテオーム解析により同定した他のHSPG結合蛋白質について同様の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の投稿が遅れたため、約30万円の余剰が生じた。また、実験補助員の謝金に関しては所属機関より支援を受けたため、約50万円が不要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費として約50万円、論文投稿費として約30万円使用する予定である。
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