ハダカデバネズミは平均寿命28年の老化・がん化耐性を持つマウスと同程度の大きさの齧歯類である。本研究では、ハダカデバネズミにおける老化・がん化耐性機構の個体レベルでの解明に向けて、遺伝子改変ハダカデバネズミの作製に必要な発生工学的技術基盤を整備することを目的とする。 真社会性動物であるハダカデバネズミは、コロニーの中で1匹の女王と1-3匹の王のみが繁殖に携わる。それ以外のワーカーは雌雄ともに不妊であるが、雌ワーカーは女王から引き離すと女王化するということがこれまでに報告されている。発生工学的技術基盤を整備するにあたり、ハダカデバネズミの性周期は約34日と非常に長いため、解析や介入操作が困難である。そこで性周期を人為的に同期化することで、計画的に研究が可能になる。そこで、前年度に手法を立ち上げた膣スメア法をもとに、性周期を決定した女王、および女王から隔離して女王化誘導した雌に対して性周期同期化法を検討した。日数を振って同期化法を検討したところ、日数によらず性周期をほぼ同期化することができた。しかしながら、膣スメア法で性周期の変動が確認できなかった個体では、同期化法もうまくいかなかった。このような個体では女王化誘導自体が成功していないと考えられ、すべての雌ワーカー個体が女王から引き離すと自動的に女王化するわけではない可能性があり、今後の検討が必要である。すでに性周期が回っている個体に対しては、この性周期同期化法は有効であると考えられるため、さらに手法を最適化する。
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